
こんにちは、Miyabiだ。
このサイトでは僕のトランスジェンダー体験を中心に、LGBTQ+の情報をお伝えしている。
今回は、LGBTQ+について書かれている本、「LGBT専門医が教える心・体そして老後大全」(針間克己・監修、わかさ出版)を紹介したい。
ブックレビューだね。
ネットサイトと違って本は1冊にまとめなきゃいけない分、大事な情報・えりすぐりの情報が載っているイメージがあるけど、これはどういう本なの?
これは僕のオススメ本でもあるので、
- LGBTQ+のどの範囲が載っている本か?
- どういう点がオススメなのか?
- 当事者向け?周りにいる人向け?
のにフォーカスしてお話していこう。
目次
「LGBT専門医が教える心・体そして老後大全」レビュー
どんな感じの本?読みやすい?
この本は4章で構成されていて、1章目はLGBTの基礎情報、2~4章目はQ&A形式で見開きで分かりやすく解説が書かれている。
LGBT?
ってことはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーだけなの?
LGBTQ+だと他のセクシュアリティ・アイデンティティも含まれるけど…
タイトルが「LGBT」なだけに、確かにレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーについての話が中心だ。
とはいえこの4つだけで当事者の悩みを完全に解説できるわけでも、周りの人の理解を完璧にできるわけでもない。
他のセクシュアリティも「たくさん」あって初めて、自他ともに理解ができる。
なのでアセクシュアルだったりパンセクシュアルだったり、トランスジェンダーの中でもXジェンダーだったり、「マイノリティの中のマイノリティ」とされるアイデンティティもちゃんと紹介されている。
このあたりで、「あ、この本は信用できるかも」と思えた。
どんな人が書いてる本?

監修の針間克己氏は、著者紹介を見ると「GID(性同一性障害)学会理事・日本性科学会理事長・医学博士」で、家庭裁判所の医務室などを経て、現在はメンタルクリニックをやっている人とのこと。
ってことは、トランスジェンダーや性同一性障害の人をよく見てきた人ってことだね。
パッと見、タイトルに「LGBT専門医」とあるから、
「トランスジェンダーは自認の性に近づけるための医療行為があるけど、LGBはアイデンティティに医療は関係ないよな?」
「まさかLGBTQ+を医療で「普通」に「矯正」しようって前時代的な話するんじゃないだろうな?」
と読む前は警戒していた。
たぶんこれは日本語の区切りの問題で、著者サイドは「LGBT~専門医が教える心・体そして老後大全~」的なイメージでタイトルを作ったのだろうな、と読了後に気づいた。

お医者さんが書かれているので、LGBTQ+の基礎知識の他に、LGBTQ+が医療機関を受診するときに起こる疑問や不安についても解説が入っている。
普段ホルモン注射以外であまり病院に行くことのない僕も、
「確かに入院したらこういうことが起こるよな~」
「突然倒れたり事故ったりしたら、こういう心配がLGBTQ+的に出てくるよな~」
と気づくことができた。
あ、だからMiyabiはいつも性同一性障害の診断書とか、ホルモン注射の記録とか携帯してるんだね。
どういう点がオススメなのか?

最初の章でLGBTQ+についての基礎知識がまとめられている。
- 「LGBT」「性自認」「性的指向」「クィア」「パンセクシュアル」「アセクシュアル」「SOGI」などの用語解説
- 色んなLGBTQ+の人の体験エピソードの紹介
- 性自認や性的指向に気づくタイミングとは?
- カミングアウトやアウティングについて
- 家族や友人など周りの人はどのように対応すればいいのか?
が、簡潔に書かれてある。
正直ここだけ読んでもらえれば良いくらいだ。
そのあとにQ&Aが続くわけだが、これも
- どのようにカミングアウトすればいい?
- アウティングされたらどう対処したらいい?
- トランスジェンダーのホルモン治療・性別適合手術・戸籍変更の情報・やり方
- 同性やヘテロセクシュアルの人を好きになったらどうすればいい?
という基本的な質問から
- 興味ないのに風俗に誘われたら?
- 同性カップルを受け入れてくれる高齢者施設はある?
- 同性パートナーといっしょのお墓に入りたい
- レズビアンの出産・子育てに関する医療機関のサポートについて
- トランスジェンダーが入院するときの病室問題
などなど、「確かに、ゆくゆくはそういうことがあるかも」と心配になる部分の解説も入っている。
基礎知識や基本的な質問はこのサイトや他でも体験談をみることができるけど、この「ゆくゆくはあるかも」な質問は言われなきゃ考えなかったりするよね。

そう、LGBTQ+というと20~30歳あたりの年齢を想定してしまい、どうしても幼稚園児~小学生といった子どもや、60~100歳の高齢者のLGBTQ+を「いない」とほったらかしになっていたりする。
でも僕自身、幼稚園時代に性別の違和感を感じ始めて、今考えると本当にサポートが必要だったのに情報も理解もなかった。
そして当然、歳をとっていけば老人になる。
「LGBTは子どもを作らない」という誤解があって見過ごされがちなLGBTQ+の出産・養子縁組・子育ても実際にはたくさんある。
その辺を丁寧に解説している印象があった。
あとは2020年出版なだけあって、コロナとLGBTQ+についても解説があったのも良かった点だと思う。
実際に読んでみての感想

僕はトランスジェンダー男性(FTM)で、本当を言えばトランスジェンダー男性の部分だけ知れれば、僕としては生きていける。
でもこの本はLGBTQ+を網羅的に扱おうとしているから、自然とトランスジェンダー女性・Xジェンダー・ゲイ・レズビアン・バイセクシュアルなどなど、自分以外の人たちの悩みと解決法も目に入ってくるのだ。
「あ、そういう悩みがあるのか、そうだよな~、当事者でないとスムーズだけど、当事者だと社会システムが無視しているだけにゴチャつきそう……」
と、当事者目線の情報を知ることができる。
これって、悩んでいるLGBTQ+当事者が読むと「こうすれば良いのか」と味方を得ることができるだけでなく、LGBTQ+ではない人が「あ、こういう目線なのか」と納得できる仕組みにもなっているということだ。
足で歩ける人が車椅子体験をしたら
「この段差、めちゃくちゃムカつく!」
「テーブル高すぎて届かないよ……」
って初めて気づける、みたいな感じだね!

なので、僕はこの本をあらゆる人に見てほしいな、と思った。
「自分が当事者で、すごく悩んでいる」
「今、身近にLGBTQ+の人がいる」
「LGBTQ+の人なんて周りにいない」
どの人でも、この本は生きるヒント・世の中が風通し良くなる目線を発見できるのでオススメだ。
まとめ

今回はLGBTQ+のオススメ本を紹介してきた。
LGBTQ+の本というと、ちょっと情報が古かったり、偏見全開で入って来たり、「読むとHP削れる……」「疲れる……」というイメージが僕にはあった。
が、この本は著者が完全にフラットで、事実や色んな当事者のやり方を丁寧に紹介してくれている。
全く疲れることなく、「ああ、こういうことがあるのか」と把握できる点でも良いなと思った。
昨日2回目の個展が終了した。
まだ2回目にもかかわらず色んな方々に観ていただけて、とても嬉しい。
僕の作品は、僕がトランスジェンダーであることも深く関わっているので、作品について説明するときに、自然とカミングアウトすることとなる。
老若男女問わず「僕はトランスジェンダーで」と言っていったところ、
- 「ああ」と、昨日の夕飯のメニュー聞いたくらいの反応
- 「えッ…へぇっ……」と、「実は不治の病で…」と言われたくらいの反応
と様々だった。
が、その間に作品があったことと、丁寧にお話をするのを意識したことで、どの人も普通に接してくれるようになった。
少しずつ認知を広げていけたらいいな……と思っている。