こんにちは、Miyabiだ。

僕はトランスジェンダー男性で、先日、戸籍の名前変更の許可が家庭裁判所で下りた。

やったね!

とはいえ、これは「変えたい!」と思ってすぐにできた訳ではない。

それに何より、戸籍の名前の変更ってあらかじめ情報がないと人生設計が大幅に狂ってしまったりするな、と感じた。

今回は

  • 戸籍の名前変更とは?
  • 名前の変更の流れについて

をお話していきたい。

トランスジェンダーの戸籍の名の変更について

1,戸籍の名の変更と、診断書

戸籍の名前の変更は「姓」「名」の2つに分かれる。

今回は「名」の変更だ。

変更の手順はざっくり

  1. 準備をする
  2. 家庭裁判所に申し立てをする
  3. 審判
  4. 役所に行って戸籍謄本の変更

となる。

「準備をする」も手順に入るの?

そう、そしてこの準備段階が重要なので、紹介したい。

名の変更の理由は一般的に色々あって

  • キラキラネームを変えたい
  • 同姓同名がいて紛らわしい
  • 通称を長く使っていて、そっちの方が定着している

などが想定されている。

トランスジェンダーで自認する性と違う性別っぽい名を変更したいときは、「性同一性障害」として、家庭裁判所に申し立てをする。

「トランスジェンダー」じゃなくて「性同一性障害」。
ってことは、診断書がいるってこと?

そう。

トランスジェンダーと性同一性障害の違いは下のリンクから見てほしいが、性同一性障害のために名を変更したいと言うことになるので、性同一性障害の診断書が必要になる。

「性同一性障害じゃないトランスジェンダーはどうするの?」と思った。

この場合は多分「通称として永年使用した」が申し立て理由になるのだろうか。

性同一性障害の診断書があると、次に紹介する「使用実績」が1年に満たなくても許可が下りる

僕は半年だった。

でもそれ以外だと使用実績が5年以上必要なので、性同一性障害ではないトランスジェンダーが名前を変更したい場合、複雑な心境になると思う。

いずれにしても、変更後、再度変更したいと申し出ても許可は格段に下りづらくなるらしい。

なので自分の変更予定先の名前変更理由は、あなたの納得のいくもので用意しよう。

診断書の取り方はこちら↓

2、今から使おう

「どうすれば名前を変えられるのかな?」と実際に半年前に調べたとき、「使用実績」が必要なことを知った。

使用実績とは、通称をどれだけ自分の名前として使っているのか、の物的証拠である。

裁判所は

コイツの名前を変えて、社会に混乱が起きないか?

ってことを危惧している。

「社会に混乱ってなんだよ」って感じだが、要は

  • 身の回りの人たちは通称のほうで呼んでくれてる
  • 今の戸籍名があると、かえって手間だし不便

って説明をすると、裁判官的に「名前を変えないと、むしろ社会に混乱があるんだな」と判断できるということだ。

…ってことは…変更許可が出る前から、変更予定先の名前を使って生活を始めちゃわないと、説得できなくない?

そうなのだ。

まだ戸籍の名前が変わってないから、使っちゃダメなのかな…」と僕も思っていた。

が、本人確認の必要のない場面ではバンバン使っていかないといけないと分かり、色んなところでの自己紹介や登録を変更予定先の名前に変えていった。

具体的には

  • 友だち、知り合い、仕事関係の人などに「こっちの名前で呼んでね!」と言って、呼んでもらう
  • 通販サイトなどの登録を変更予定先の名前でする
  • 公共料金の契約を変更予定先の名前でする

などだ。

すると、あなたの元に変更予定先の名前で書かれた郵便物・メール・領収書・請求書・ポイントカード・診察券・年賀状・名刺・SNSなどなどの物的証拠が集まってくる。

特に日付の入った証拠品は大事に取っておこう。

これらを申し立てのときに提出する。

裁判所的には年賀状や公共料金の支払い書が推しらしい。

身近な人に浸透していることが分かって、生活必需品の契約でも使っていて網羅してる感あるからかな。

僕は公共料金の契約で通称を使えるのを知らなかったのと、年賀状も交換しなくなって久しく、両方とも手元になかった。

だが郵便や宅配で届いたものの宛名部分、領収書、SNS、メール、診察券などを集めた分だけ提出したら通ったので、「年賀状と公共料金の支払い書がなきゃいけない!」という訳ではない。

補足

使用実績の証拠品は、提出しても返却されないのでコピーを提出する。

診断書も返却されないが、原本を求められた。

僕は性同一性障害の診断書は、一種の身分証明の品として常に持ち歩いていたいものだったので、そのことを伝えたら、

「審判が終わったら返却するかもね」

的な手続きを勧められ、コピーと原本の両方を提出し、原本だけ返却してもらった。

他にも収入印紙や郵便切手も必要となる。

これらの値段を電話できくついでに、コピーで大丈夫かを質問しておくといいだろう。

3,申立書を書く

申立書は家庭裁判所でもらうか、家庭裁判所サイトの「名の変更」ページでダウンロード→プリントアウトでゲットできる。

申立書2枚目「申し立ての理由」は、性同一性障害を理由にする場合は「8 その他」にチェックをいれ、「性同一性障害のため」と書く。(名前変更の前に戸籍の性別変更を済ませている場合は、「異性と紛らわしい」にチェック)

その下の自由欄には

  • いつから性別に違和感があるか
  • いつ性同一性障害の診断が出たか
  • ホルモン治療の実績があれば

をはじめにザッと書き、続いて

  • 現在の戸籍名で、具体的にどういった不都合があるか
  • 現在の戸籍名で「精神的苦痛」はどういったときに起こるか

を書く。

精神的苦痛が全てじゃい!」と思うが、裁判官的に「社会の混乱」を心配しているので

「男/女なのに、名前が女/男なのが嫌」って場合は

現在は男性/女性として生活していますが、戸籍の名では本人確認の際に、見た目と名の性別の印象に差が生じ、生活に支障が出ています。また戸籍の名を伝える際に自身の事情を伝える必要があり、精神的苦痛も感じています

のように、精神的苦痛とともに「変更前の名前だとこんな手間・混乱が出る」ことも書くと良いと思う。

4,面談

申し立てた後に連絡が来て、一度家庭裁判所で面談となる。

個室で申立書や使用実績を元に

  • いつから違和感があったか?
  • 現在の困りごとはどういうものか?
  • 今は男性(トランス女性の場合は女性)として生活していることの確認
  • 手術の予定はあるか?
  • 他に伝えておきたいことは?

と質問された。

性同一性障害を理由にしているだけあってか、僕の面談ではアライの人たちが対応してくれた。

「理解のない人が出てきて、あることないこと言われて差別されたらどうしよう…変更できないかも…」と不安だったが、そんなことはなかった。

ちなみに「どんな困りごとがあるか」などは、僕はブログを書いてきているので「こんなこと考えてるな」と記事を思い出しながら話せたが、ブログを書いていなかったら言葉にするのが難しかった

本当のことを話せばいいし、分かってくれる。

けどプライベートなことだし、人によってはコンプレックスやトラウマを開示しなきゃいけないことになってしまうかもしれない。

なので面談前に上の質問リストを見ながら「どう言おうかな」と考えておくと安心だと思う。

5,審判

面談が終わって裁判所内で1時間くらい待っていると、「許可が出ました」と伝えに来てくれた。

ここで審判書を渡してくれる。

これを持って自分の本籍・現住所の市区町村役所に行き、戸籍謄本の変更・住民票の変更が済んだら、晴れて改名だ。

戸籍が変わったら変更するもの

戸籍を変えたら、変更するものがたくさんある。

  • マイナンバーカード
  • 車などの免許証類
  • 保険証
  • 年金
  • パスポート
  • 銀行口座名
  • (変更前の名前がある場合)印鑑登録
  • クレジットカード

などなどなどなど、前の名前で登録してあるもの全部だ。

本人確認系のものを優先して変更していくと良いと思う。

なんかすごい大変だね。

大変だ。

市区町村役所での戸籍謄本の変更が即日~2週間くらいかかる。

忙しい時期だと早めて2週間強って感じだ。

「いついつに変更した名前が証明書として必要だから…」と、時間・日程に余裕をもって戸籍の名の変更の申し立てをすると安心だ。

まとめ

今回は戸籍の名の変更の手順についてお話してきた。

異様に手間暇かかる。

個展前の忙しい時期だったので、なおさら「時間かかるな!」と感じた。

性同一性障害が理由の申し立てについては、使用実績は6ヶ月前後の人の体験談をよく見る。

もし1回で許可が出なかったら、裁判所には異議申し立てみたいなシステムがある。

すぐに異議を言えば、たしかもう1回判断してくれる感じだったと思う(うろ覚えなので、この辺はまた調べてほしい)

今は戸籍謄本の変更待ち状態だ。

早く全部の証明書を変えたい。