こんにちは、Miyabiだ。

ほんの何十年か前までLGBTq+などのセクシュアリティは「性的倒錯」と言われていた。

また最近では「性同一性障害って言うと状態に対する勘違いが生まれるから、別の言い方にしよう」という動きがある。

セクシュアリティ関連以外でも、「障害」は「障がい」「障碍」って最近書かれるよね。

これら「倒錯」「障害」という言葉、あるいは漢字は、僕たちの認識とともに変化していく。

今回は

  • 何で「倒錯」「障害」って言わなくなった・書かなくなったの?
  • それぞれの言葉は、なぜ使われていたの?

についてお話していこう。

性的倒錯の「倒錯」という言葉

LGBTq+は性的倒錯?

探偵小説で有名な江戸川乱歩。

この人は男色史の研究もしていたことから、小説に美少年や美男子を登場させたり、彼らを愛でたり、男色的な表現が作中に多く見られる。

わりと文学的にこういうのって多いんじゃない?
古事記の時代からずっとあるし。

そう、これ自体は特に「変わってる」わけでなく、文学史的に普通のことだ。

問題は当時、これら作品の紹介文や、推理小説執筆の手引き本に、同性愛を

「異常性癖」「性的倒錯」

と書かれていたことだ。

「倒錯」って何?

「異常性癖」は文字の見てくれから「あぁ~LGBTq+に理解のない時代に言ってそう~」と理解できる。

では「倒錯」って何だろう?

倒れるに、錯覚の錯……??

調べてみた。

倒錯とは、

  • 逆であること
  • 正常の状態に反した行動傾向
  • 社会・道徳に反した行動傾向

のことを言う。

「モラル的にダメ」「道徳的じゃない」というときに「倒錯」と使うようだ。

以前トランスヴェスタイト(クロスドレッサー)についての記事を書いたが、この「トランスヴェスタイト」は「服装倒錯」という言われ方も過去にされ、そのイメージをなくすために「クロスドレッサー」と言う人が多い↓

ところで、それがモラルに反しているかは、社会の認識によって変わってくる

「女は台所の仕事ができなければダメ」は、50年前の日本では道徳的だったが、現代ではこのセリフを言って強制すること自体がモラハラとなる。

すっごい真逆だね……!

LGBTq+などのセクシュアル・マイノリティも、江戸川乱歩の時代は「異常性癖」「性的倒錯」だった。

何故なら男女が結婚をして、家の跡取りである子どもを作って、というのが当時の当たり前であり、道徳であったからだ。

「性的倒錯」と言われていた時代には、心理療法で同性愛者(当時は全てのセクシュアル・マイノリティは同性愛者とごっちゃになっていたのも含め)状態を、上に書いたような「道徳的な」状態に矯正することが可能だとも信じられてきた。

が、現代ではLGBTq+というのは

  • 「正常」に対する「異常」、ではない
  • 「異常」→「治療して正常にすることが可能」ではなく、どのセクシュアリティも「正常」であり、変えることはできない

ことが認知されてきた。

あ、こうなったらLGBTq+に対して「倒錯」って言葉を使ったら「解釈違い」ってことになるのか!

そう、つまり、

「今までクジラは魚類だと思われてきたし、図鑑にもそう書いてあった」→「研究によって、クジラは哺乳類だと分かった!」→「「クジラは魚類」って書いてある本は間違ってる」

みたいな流れと同じように、「異常性癖」「性的倒錯」という言葉は正しくLGBTq+を説明していないとして、現代では使われない。

「障害」という漢字

障「害」は、間違った漢字?

一昔前まで、身体的・知的・精神的問わず、「障がい」は「障害」と表記されてきた。

最近は「障がい」「障碍」って書かれるよね。

ところが実は、元々の表記は「障碍」だったのだ。

戦前、その表記は「障碍」だった。

が、戦後に常用漢字を決めるとき、「碍」の字は常用外漢字となった。

このことから、「障碍」が同じ読みの「障害」に統一され、以後現代まで「障害」の字が使われてきたのだ。

「害」と「碍」の違いは?

なので障「害」の字も別に間違っていないといえば間違っていない。

が、疑問に思うのは、何でガイの漢字には「害」も「碍」もあるのか、という点だ。

辞書を見よう。

害…きずつける。そこなう。悪い状態にする。わざわい。

碍…邪魔をする。妨げる。

同じ読みでも、けっこうイメージが違うね。

「害」を使う熟語は被害、害虫、水害など、マイナスもマイナスなものばかりだ。

というのは「障害」表記に反対する声で聞かれるが、そもそもの漢字の意味自体が「0からマイナスになる」イメージだ。

対して「碍」は「0からマイナス」と言うよりも、「目の前にハードルがある」イメージだろうか。

僕は性同一性障害(性別不合)の診断を受けているが、トランスジェンダーであることが自分を損なっている、とは思わない

むしろトランスジェンダーであるけど、周りの社会システムが全くトランスジェンダーを想定していないがゆえに、何をするにも「トランスジェンダーなんですけど…」とカミングアウトしなければならないし、医者の「性同一性障害」の診断書も無視される勢い、という「ハードル」を感じる

とするならば、「障害」よりも圧倒的に「障碍」の方が解釈が一致するのだ。

これも解釈違い、解釈一致に関する問題なんだね。

まとめ

今回は「倒錯」「障害」という、LGBTq+の歴史に関連していて、使用が昔よりも減った漢字について見てきた。

なんとなく下に見ているイメージがあるというのは分かるが、「ダメだからダメなの!」以外にどのようにこの「ダメ」を噛み砕けば良いのかが分からなかった

言葉や漢字を調べると、「ダメだからダメ」以上に「解釈違い」という腑に落ちる表現を手に入れることができ、ようやく噛み砕くことができたと思う。

最近寒くて布団が手放せない。

ストーブ付けて頑張って作品制作していきたい。