こんにちは、Miyabiだ。

トランスジェンダー (性別違和、性別不合、性同一性障害を含む)を判断するのは、その人の認識の問題なので難しい。

そして実際にトランスジェンダーであっても

「トランスジェンダーって○○じゃないといけないのかな……」

「○○じゃない自分はトランスジェンダーと言ってもいいのだろうか?」

という悩みが出て来たりする。

本人だけじゃなくて、保護者や先生などの周りの人にも「この子はトランスジェンダーだからこうしなきゃいけないのかな?」って悩みがあったりするよね。

僕はトランスジェンダーで、今は男性として普通に生きることができているが、性同一性障害の診断書が出る前は

「自分はヒゲを生やしたり、スーツを着たり、ツーブロックにしたりしたいわけじゃない……男っていう認識で本当に合っているのかな……」

という悩みがあった。

今回はトランスジェンダーに対するよくある思い込みや勘違いを紹介して、「トランスジェンダーはその人のたくさんあるアイデンティティの内の1つなんだ」ということをお話していこう。

【基本情報】トランスジェンダーとは?

トランスジェンダーとは身体的性(生まれた身体・生まれたときの戸籍の性別)と性自認(自分で自分をどの性として認識するか)が一致していない状態、またはその状態の人のことを指す。

その状態を認識する年頃は人によって様々だ。

僕の場合は物心ついた頃から、「自分は男の子なのに、周りは女の子って自分のことを思っているなぁ」と、自分と周りの認識の差にモヤモヤしていた。

思春期になって第二次性徴が始まると、「自分は男の子だから精通があるはずなのに、何故か生理が始まったし胸が膨らんでいる????」「精通はいつ??」と、自分の認識と自分の身体の変化の差にモヤモヤし始めた。

身体の性別にもモヤるけど、男女の身体の差が出る思春期の前は自分と周りの認識の差にモヤるんだね。
だから身体的性の説明に「生まれた身体」以外に「生まれたときの戸籍の性別」も追加しているんだね。

そう、「トランスジェンダー」を説明するときには身体と性自認の差によくフォーカスされるが、実際にはそれにプラスして、自分と周りの認識の差に苦しむ人も多い。

ではここから実際に、トランスジェンダーに対するよくある思い込みについて見ていこう。

トランスジェンダーに対するよくある思い込み・3選

1,男らしく、女らしくなきゃいけない

シスジェンダー(身体的性と性自認が一致している人)でもこの「男らしく」「女らしく」に苦しむ人は多い。

トランスジェンダーもカミングアウトしていない場合、性自認の通り行動すると「男の子なんだから!」「女の子なんだから!」と身体的性に添って行動するように注意されて、「自分はそうじゃないのに……」と悩む。

これがきっかけで、自分はトランスジェンダーなんだと気づいたりもする。

だがいざカミングアウトして、自分の性自認の通り生きれる環境になったとき

「自分は男だから、髪をスポーツ刈りにしなきゃ」

「自分は女だから、花柄ワンピース着なきゃ」

「自分は男だから、「俺」って言わなきゃ」

「自分は女だから、大人しくしなきゃ」

と、逆に「男らしく」「女らしく」にとらわれてしまうことが多い。

何で?

何故なら、男から女に、女から男に「性転換(←この用語はあまり使わない)」したなら、「中性的」だったり、変わる前の性別を匂わせたりすると

「あの人は本当の性別は、変わる前の性別だ!トイレや更衣室を覗くつもりだったんだ!」

勘違いを爆発されかねない危険性があるからだ。

なのでボーイッシュなトランスジェンダー女性や、ジェンダーレスなトランスジェンダー男性だと、普通に生きるのにリスクがあってしまう。

でもシスジェンダーでは許されているよね?

そう、シスジェンダーではボーイッシュな女の子も、中性的な男の子も許されている。

トランスジェンダーは「トイレや更衣室を覗く」ような短絡的で一時的なことが目的で性別を変えているわけではない。

一度しかない人生を、外から押し付けられたイメージを演じるのではなく、自分の性別で生きようとする、人生の在り方を実現するために、本来の性自認で生きようとするのが、トランスジェンダーだ。

↑このようなことは、誰でも一度は考えたことがあるだろう。

それは仕事かもしれないし、恋人かもしれないし、趣味かもしれない。

その内の自分の性別部門が、シスジェンダー・トランスジェンダーである。

ちなみに、「男らしく」「女らしく」「中性的」などのジェンダーをファッションや言葉遣い・しぐさで表現することを性表現という↓

補足

子どもを持つ保護者は、自分の子どもがトランスジェンダーだと分かると

「おもちゃや服は今まで女の子(男の子)コーナーに連れていってたけど、これからは男の子(女の子)コーナーのがいいのかな?」

のように思う人もいるかもしれない。

確かに、同世代の子どもたちは自分の性別によって持っているおもちゃや服が違うので、「この子の生きる性別と持ち物を合わせなきゃ!」と考えるのは、コミュニティ内での生きづらさの排除という目線では正しい。

だが、実際に遊ぶと分かるように、おもちゃの女の子用・男の子用のどちらも、面白いものは性別や年代を超えて面白いし、つまらないものはつまらない。

他の女の子は「つまんない」と言っても1人の女の子にとってはとても面白いものかもしれない。

ランドセルが「男は黒・青、女は赤」から、「たくさん色のラインナップがあるから、好きな色を選ぼう!」に変わっているように、おもちゃや服も企業が決めた性別に関係なく、その子が好きなものを否定しないことが大事なのではないかと、僕は思う。

2,トランスジェンダーなら皆、性別適合手術を受けたい

2021年現在の性同一性障害の人の戸籍の性別変更に関する法律に

「生殖機能を永久に欠いていること」

が条件に含まれている。

これは、生殖機能が元々ない人か、あるいは性別適合手術で外性器・内性器ともに摘出することが条件ということだ。

ここから分かるように、「戸籍の性別を変えたいトランスジェンダーって、皆、性別適合手術を受けたい人なんでしょ?」という思い込みが見える。

ねぇ、「トランスジェンダー」と「性同一性障害」って何が違うの?

「トランスジェンダー」とは最初にいったように、身体的性と性自認が一致していない状態や、その状態にある人のことを指す。

「性同一性障害」は、トランスジェンダーの中でも「性別適合手術を受けたい」と思っている人のことを指す、医療用語だ。(2022年からは「性別不合」と診断名が変更される)

つまりトランスジェンダーの中には、「手術は必要ないかな」という人もいれば、「絶対に手術を受けたい」人もいる、ということだ。

一方で戸籍の性別を見ると、トランスジェンダーは「自分の性別で生きたい」、つまり「戸籍の性別を性自認の通りに変更したい」と思っている人が多くいる。

ここに現行の法律と、当事者のニーズとのギャップが生まれているのだ。

現行の法律だけを見ると「トランスジェンダーは皆、性別適合手術を受けたい人」と勘違いしてしまうが、実はそうではない人も多い。

または「手術は受けたいけど、それを戸籍の性別変更の条件にされているのはおかしい」と思っている人もたくさんいる。

手術をしていなくても、ホルモン治療という方法もあるよ。
これだけでもかなりの変化があるから、実際に手術をしていなくても戸籍の性別とのギャップが生まれているのが、ホルモン治療だけ受けている人の現状でもあるよ。

3,トランスジェンダーは必ず同性愛者

実際にトランスジェンダー男性でゲイ、トランスジェンダー女性でレズビアンという、セクシュアル・マイノリティの掛け合わせも存在する。

が、シスジェンダーにも異性愛者・同性愛者がいるように、トランスジェンダーにも異性愛者・同性愛者の両方が存在する。

また、アセクシュアル・ノンセクシュアル・バイセクシュアル・パンセクシュアルなどなど、他の性的指向(恋愛感情・性欲がどの性に対して起こるか・起こらないか)も存在する。

人によるってことだね。

ここで問題になるのは、

「トランスジェンダーで女性になった男が、男を好きだから同性愛者」

というような言い方をされることだ。

トランスジェンダー女性は、女性だ。

トランスジェンダー男性は、男性だ。

トランスジェンダーXジェンダーは、Xジェンダーだ。

なので上に挙げたように、トランスジェンダー女性が男性を恋愛対象とするのは、異性愛(ヘテロセクシュアル)である。

性的指向は身体的性について言われることが多いが、実は性自認で判断される

「ゲイ」という言葉を例に出すならば、これは「性自認が男性である自分」が「性自認が男性である相手」に対して恋愛感情・性欲を抱くアイデンティティなのだ。

この説明は性別を入れ替えればレズビアン、ヘテロセクシュアルにも応用ができる。

補足すると「アンドロセクシュアル」「ウーマセクシュアル」のように自分の性自認を度外視して、相手の性自認のみに言及した言葉もある。

あるいは「パンセクシュアル」のように、自分の性自認にも相手の性自認にも言及せずに、「性別問わず、好きになった人が好きな人」という言葉も存在する。

シスジェンダーの女性に対して「あなたは男だ」と言ったり、シスジェンダーの男性に対して「あなたは女性だ」と言ったりしないのは、身体的性ではなく、「自分は女だ」「自分は男だ」というその人の性自認に対してリスペクトがあるからだ。

同じように、トランスジェンダーも、違うと感じている身体的性ではなく、その人が最もその人らしいと認識している性自認をリスペクトすると、相手を傷つけることなく、平和な人間関係を築けると思う。

まとめ

今回はトランスジェンダーに対してよくある思い込みや勘違いを取り上げてみた。

トランスジェンダーの中にも色々な人がいる。

何故なら、「トランスジェンダー」=その人、ではなく、「トランスジェンダー」はあくまでも「映画好き」「画家」「東京出身」「帰国子女」「黒髪」などの要素と並ぶ、1つのアイデンティティに過ぎないからだ。

アイデンティティの1つに過ぎないからと言って「黒髪のやつは人間扱いしなくていい」と金髪の人に言われたら「何で髪の色だけで決めつけるの?」と思ってしまうように、トランスジェンダーも1つのアイデンティティに過ぎなくとも、それは重要なもので、軽んじて良いという意味ではない

「トランスジェンダー男性っていうからには、ヒゲをダンディに生やさなきゃいけないのかな……」と思い込んでいた時期もあった。

が、シスジェンダー男性を見るとヒゲをつるつるに処理している人も普通にいる。

ヒゲを生やす・生やさないはその人のファッションに過ぎないと思ったら、僕はとても気が楽になった。

「そもそもトランスジェンダーではないのかもしれない…」

そう思った方は、こちらの記事を見てみると色々整理ができるかもしれない↓