こんにちは、Miyabiだ。

性別違和を感じてネットや本を調べると「GID」「SRS」「FTM」「MTF」など、アルファベットの用語が多くて難しい!と思ったことはないだろうか?

性別違和って治療で自分の自認する性別に身体を合わせられるから、LGBTq+の中でも医療関係の用語が多いよね。

お医者さんでない当事者や周りの人からすると「知りたいのに専門用語がいきなり出てくる……」とハードルが高く感じてしまう。(実際僕がそうだった…)

今回はLGBTq+のT、トランスジェンダーや性別違和に関係する用語についてまとめてみた。

頭の整理に使ってもらえると嬉しい。

性別違和に関する用語集(あいうえお、アルファベット順)

クエスチョニング

クエスチョニングは「自分の性自認が分からない状態」のことを言う。

まだ模索中で自分でもまだはっきりとコレ!と決まっていない場合、クエスチョニングとなるのだ。

クエスチョニングの時期を経て、後に「男性」「女性」「Xジェンダー」などの性自認になる人もいれば、「分からないことこそが自分のアイデンティティ」として、クエスチョニングであることを選択する人もいる。

Xジェンダーについて知らなかったり、トランスジェンダー自体に誤解があったりすると、正しい判断が下せない。

またちゃんと知った後も「あのときこうだったな」「ああ言われたとき、こう感じたな」と自分の経験を振り返ったり、納得がいくまで考えたりする時間も必要だったりする。

なので性自認が分からなくても「早く決めなきゃ!」と焦らずに「クエスチョニングなんだ」と一度納得してから、性自認を模索すると良いかもしれない。

身体的性

身体的性とは、生まれた身体の性別のこと。生物学的性別とも言われる。

男性、女性、インターセックス(DSDs)とがある。

染色体や外性器・内性器、性ホルモンなどから判断される。

性自認

自分で自分をどの性として認識しているか、のこと。

男性、女性、Xジェンダー、クエスチョニング……などなど、様々な在り方が存在する。

勘違いされやすいが、身体的性や性的指向(どの性に恋愛感情を抱くか)とは関係がない。

身体的性、性自認、それと性的指向、性表現の4つで「セクシュアリティ」となるよ。
これらは誰しもが持つものなんだ。

性同一性障害

性同一性障害とは、性自認と身体的性が一致せず、外科的治療を希望する状態を指す、従来の言い方である。

お医者さんの診断でも「性同一性障害」という名前で診断書が出るが、「障害」という名称が誤解を招く懸念もあり、現在では世界的に「性別違和」「性別不合」と呼ばれている。

またWHOは性同一性障害を「精神疾患」の項目から外し「性の健康に関連する状態」という分類の中の「性別不合」という項目に変更した。

「性同一性障害」というと不快に感じる当事者もいるので、もっと当事者に寄り添った表現をしている「性別不合」「性別違和」の方を使うと良いかもしれない。

性別違和

性別違和は、米国精神医学会が「性同一性障害」の代わりに診断名として使う用語だ。

実際はそれよりも昔から当事者によって使われてきたようだ。

トランスジェンダーで物心ついた頃から「LGBTq+」という用語は知らなくても、自分の性別に違和感を感じていた僕からすると、「性別違和」という用語は当事者の率直な感覚がよく表現された言葉だなぁと感じる。

性別不合

WHOが、2022年1月から「性同一性障害」という診断名を「性別不合」に変更することを発表した。(「性別不合」は厚生省による仮の翻訳なので、今後日本語訳が変わる可能性もある)

これは性同一性障害が「精神疾患」に分類されていたことによる当事者に対する誤解や偏見が出ていることによる変更だと考える。

昔は異性装同性愛も「精神疾患」に入れられていた歴史がある。(もちろん、この2つは病気ではなく当人のアイデンティティである)

トランスジェンダーも心の性別を改心させたり、心を矯正したりすると身体の性別に合った性自認に、「正常に戻る」と考えられていた過去がある。

だがそうではない。

トランスジェンダーもいわば本人の認識に身体の性が合致していない状態でありアイデンティティの話なのだが、とはいえ、異性装がファッション、同性愛が恋愛によって自己実現できるのに対して、トランスジェンダーは身体を変更する医療行為が自己実現の手段に入る。

医療行為を受けられる選択肢がある、ということはトランスジェンダーにとって重要なのだ。

なのでトランスジェンダーで性別適合手術やホルモン治療などの医療行為で、身体的性を性自認に近づけることを希望する人に対する診断名が必要、ということで、「性の健康に関連する状態」の中の「性別不合」という項目ができ、さらに性別違和が「病気」「障害」ではないという宣言もされた。

当事者による現場の声だけでなく、WHOのように影響力の強いところが寄り添った対応をしてくれると、世の中の流れが一気に変わったりするから良いよね。

性別適合手術

性別適合手術は、性自認に身体を近づけるように、外性器・内性器をとる手術のことだ。

病院によっては胸をとる、豊胸する、性自認に合った外性器を形成するなどの内容も含まれたり、別メニューであったりする。

2021年現在の日本で、戸籍の性別を変更するのに性別適合手術を受ける必要がある。

だが身体のみで考えると、健康体にメスを入れたり、全身麻酔をしたり、それによる痛みなどでしばらく動けない日が続いたり、また料金面でも高額で、あらゆる面でリスク・ハードルが高い。

もちろん性自認に身体を近づけることができるメリットは大きい。

手術はよく検討して臨むほうが良いだろう。

また戸籍の性別変更に関する条件の見直しも、政治家さん方、ぜひ行ってほしいと思う。

トランスジェンダー

トランスジェンダーは性自認と身体的性が一致していない状態・人のことを言う。

ここで大事なポイントは、必ずしも性別適合手術やホルモン治療を望んでいるわけではないということだ。

また「身体的性・男で性自認・女」「身体的性・女で性自認・男」の2種類しかないわけでもない。

「性自認と身体的性が一致していない、違和感がある」ということであればトランスジェンダーに当てはまるので、Xジェンダーなどもここに入るのだ。

トランスセクシュアル

Miyabiによる油絵作品「フィクションの中だけの存在だと思ったかい?」

トランスジェンダーと似ているが、トランスセクシュアルはトランスジェンダーの中でも外科的手術を望む人のことを言う。

「トランスジェンダーの人が、必ずしも手術や治療を必要としていない」と上で言ったが、トランスセクシュアルはその中でも「望む派」と考えると良いだろう。

ホルモン治療

トランスジェンダーが身体的性を性自認に近づける手段の1つ

ホルモン治療ではトランスジェンダー男性には男性ホルモンを、トランスジェンダー女性には女性ホルモンを打つことで、身体に変化をもたらす治療法だ。

男性ホルモンでは生理が止まる、ヒゲが生える、声が低くなるなどの変化がある。

女性ホルモンでは胸が膨らむ、肌質がきめ細かになる、骨盤周りに脂肪がつくなどの変化がある。

このような服や髪形の違いだけでは出せない身体的な変化が出るメリットがあるのだ。

デメリットとしては中断しても後戻りできない変化がある、定期的に注射や内服をしないとホルモン切れといって更年期障害の症状が出る可能性がある、ホルモンによる効果で「ニキビが出る(男性ホルモン)」「勃起障害が起こる(女性ホルモン)」などの副作用がある、そもそも効果自体に個人差がある、などがあげられる。

実際にホルモン治療をしているトランスジェンダーの体験談、トランスジェンダーを多く診てきて知識のあるお医者さんの話をよく聞いて、慎重に検討すると良いだろう。

↓僕も男性ホルモン治療をしているので、体験記を参考にどうぞ↓

FTM

FTMはFemale to Male、つまり「身体的性が女性で、性自認が男性の人」のことを指す言葉だ。

トランスジェンダーの一種で、お医者さんの説明や治療メニューでも使われる言葉なので、覚えておくとスムーズだ。

僕は自分のことを「トランスジェンダー男性」と言うことが多い。

FTMは自分の認識ではない「女性」も含まれるので、それよりはトランスジェンダー男性と言う方がしっくりくるからだ。

だがSNSのプロフィールだったり、文字数制限のあるところでは「FTM」は3文字なので便利なので、日本ではこちらを使用している人が多い印象を受ける。

世界では「トランスジェンダー男性」と表記するのが増えてきている。

FTX

FTXはFemale to X、「身体的性は女性、性自認はXジェンダー」の意味だ。

性自認は男性・女性だけではない。

Xジェンダーもある。

Xジェンダーの場合は「トランスジェンダーX」と言うよりかは、「Xジェンダー」と言う方が多い。

だがFTMやMTFと同じように、お医者さんにホルモン治療や性別適合手術を受ける相談をするときに「身体的性が分かることによって、どういう治療が効果的かが判断しやすい」「FTM・MTFと違ってXジェンダーであることが分かりやすい」というメリットがある。

GID

GIDとはGender Identity Disorder、つまり性同一性障害の略だ。

日本でも「性同一性障害」という代わりに「GID」と表記される場合が多いので、ジェンダークリニックの説明などで見ることがあるだろう。

ただこれも「性同一性障害」「性別不合」のところで解説したように、2022年からは診断名が「性別不合(Gender Incongruence)」となるので、近い内に「GI」になりそうな予感がする。

MTF

MTFはMale to Female、「身体的性が男性、性自認が女性の人」のことを指す。

だいたいはFTMの説明と似ているが、こちらもわざわざ「男性」を意味する「Male」が入っていることから、身体的性も重要になる医療分野では便利な用語として使われるが、実際にお医者さん以外の人は「トランスジェンダー女性」と言うことが多いと思う。(SNSなど文字数制限のあるところではMTFも見かける)

僕も普段は「トランスジェンダー女性」と呼んでいる。

一方でホルモン治療や性別適合手術を検討しているトランスジェンダー女性の方は、病院メニューでは「MTF」と表記されていることが多いので、こちらも覚えておくと良いと思う。

MTX

MTXはMale to X、「身体的性が男性、性自認がXジェンダーの人」のことを指す。

こちらも普段は「Xジェンダー」と言うことが多いが、性別適合手術やホルモン治療を受けることを考えている場合はFTXと同じように、お医者さんに「MTX」と言った方がスムーズにいくだろう。

SRS

SRSはSex Reassignment Surgeryの略で、性別適合手術のことだ。

「性別適合手術」と表記されることも多いが、「SRS」と短縮して書かれることも多く、知らないと「FTMはトランスジェンダー男性で、GIDは性同一性障害で、えーと、SRSは……?」と大混乱するので(僕はした)、病院や相談会などで性別違和やトランスジェンダーの解説を受ける前に一度、意味を確認することをおすすめしたい。

Xジェンダー

Xジェンダーは男性・女性の他の「第三の性」の総称だ。

なのでXジェンダーの中には「男性と女性の中間である・中性」「男性でも女性でもある・両性」「男性でも女性でもない・無性」などなど、男性とも女性とも言えない様々な性自認のカテゴリーがある。

またこれらを「Xジェンダー」とまとめるのは日本だけなので、「英語で自分の性自認を伝えたい!」という場合は「Xジェンダー」ではなく、「中性」「両性」「無性」「ジェンダーフルイド」など、細かいズバリの性自認を言ってしまう方が良いだろう。

まとめ

今回はLGBTq+の中でも性別違和に関連する用語をピックアップして解説してみた。

トランスジェンダーや性別違和は、自分のアイデンティティで生きるときに手術や治療などの医療行為が手段としてある。

なので「性自認に合わせて生きたいな」と思ってお医者さんに行ったりネットで調べたりすると、LGBTq+の他のアイデンティティに関する説明よりも怒涛の専門用語を一気にあびることになるのだ。

「GIDのSRSで、FTMの場合は~」と言われても、初めてなら「アルファベットの羅列だから字面から意味を推測できない……詰んだ」となってしまう。

というか、2年前の僕はなった。

その経験から、性別違和に関する用語集があればいいな~と思い、今回の記事に繋がったわけだ。

少しでも助けになれば幸いだ。

Miyabiの油絵作品「子ども時代は目に見えない」