こんにちは、Miyabiだ。

僕はトランスジェンダー男性(FTM)で、男性ホルモン注射を打ち始めてから2年目になろうとしている。

一般的なホルモンによる効果の説明と、実際に起こった変化って何か違いはあるの?

男性ホルモン注射には「ヒゲが生える」「生理が止まる」「筋肉質になる」「声が低くなる」などの効果や「ハゲになる」「ニキビが出る」などの副作用もあるとお医者さんや詳しい人からの説明があるが、実際2年近く打ってきてどう感じたか?

今回はこのような僕の経験談を、男性ホルモン注射の効果や副作用の説明を見ながらお話していこうと思う。

あくまで経験談なので、「ふ~ん、こんな感じかぁ」程度に聞いてほしい。

FTMの男性ホルモン注射と、その変化とは?

FTMとはトランスジェンダー男性のことで、身体的性(生まれたときの身体の性別)が女性、性自認(心で認識している自分の性)が男性の人を指す。

なのでFTMは男性として普段生きている人が多いわけで、その中でも「身体に男性特有の分かりやすい特徴がほしい」と感じたときに行うのが男性ホルモン注射だ。

もちろん服装や髪形だけで周りから「完全に男」認識される人もいるよ。(Miyabiはそうならなかったからホルモン治療をしているよ)

全身麻酔をしたりメスを入れたりして子宮・卵巣を取り除く性別適合手術のような命の危険はほとんどなく、かつ、ホルモン剤を扱っている病院はジェンダークリニック以外にも泌尿科や産婦人科など日本にもたくさんあるということで、身体レベルから自分の性別を取り戻す方法として比較的やりやすい治療だと思う。

【経験談】「男性ホルモン注射の効果」と実際の変化

ここからは実際の僕の経験談をお話しようと思う。

参考にしたのは、男性ホルモン注射の変化についてまとめたこちらの記事だ↓

まずは「効果」、つまりプラス面について見ていこう。

1,生理が止まる

FTMでホルモン治療に踏み切ろうと思う人の大半が、生理が止まることを何が何でも、一番に期待しているだろう。

僕は注射を打ち始めて半年くらいは来たり来なかったり揺れがあったが、半年が過ぎてから完全に来なくなった

ただ予定があったり、去年のようにパンデミックで病院自体が長期休みになったりでホルモン注射自体が打てなくなると、あっさり再来してくる可能性がある。

「ホルモン注射だけで一生来なくなればいいのにな~」と思いつつも、定期的に打つしかない。

生理が来なくなるのは外部から男性ホルモンを増やしていることで身体内で卵巣が「働かなくて大丈夫」と認識するからだそうで、卵巣がそう完全に認識するまでの期間は個人差がある。

色々話を聞く限り、一番の願望でありながらも変化があるかないか・いつ変化が来るかは一番個人差が大きいな、と感じた。

2,声が低くなる

声が低くなることも醍醐味の1つだ。

僕の場合、音域自体は1オクターブ下がってカラオケで歌える男声歌手の曲が増えた。

「じゃあもう男の声なんだ!やったね!」

と思われるかもしれないが、「音域が低くなっただけじゃ、男性の声として認知されにくいな……」というのが実際のところだ。

女声の頃のクセで喉で話してしまうが、音域が低くてもこの話し方をすると「女の子?」という印象になる。

男声として認識されるには胸に響かせるという話し方を、いつでもとっさにできると良いなぁ、練習が必要だなぁ……と、コンビニのレジで「レジ袋いりませんっ」とつい喉で話してから「スプーン付けてください」とどんどん男声になるという後出しじゃんけん状態の僕は練習の大事さを感じている。

3,ヒゲが生える

ヒゲは上2つに比べると、微妙だ。

本当に微妙だ。

僕の場合は、「中学生男子が顔を洗っていると、産毛よりも濃いめの毛をアゴに発見して「……ヒゲ??」と戸惑い、後で友人に自慢する」というときのヒゲくらい、本当に微妙なヒゲしか生えない

一応剃ってはいるが、剃らないからと言って休日のおじさんのように「顔の下半分が真っ黒に!」とはならない。

ヒゲを綺麗に生え揃えてちょい悪オヤジ……はできないだろう。

とはいえ、僕はヒゲはあまり欲しいとは思わない派なので、これ以上生えると困ると思う。

ヒゲらしきものが生えているのを確認して「わぁ、ちゃんと男性化してる……!」と感動はした。

見てみると「ホルモン注射だけでヒゲが生えそろって、毎日の髭剃りが大変。脱毛したい」という人もいるようなので、これも個人差が大きいと考えると良いと思う。

4,筋肉が付きやすくなる

筋肉については、普段どこを、どのくらい動かしているかによって差が出てくると思う。

だが生理時に漏れの心配や出血、立ち上がれないほどの腹痛などのハンデで運動がしづらかったことを考えると、毎日決まった量の運動ができることは素直に筋肉の付きやすさに直結するな、とは感じた。

また、僕は大学まで1日何時間とかなり本格的に楽器を演奏していて腕の筋肉が発達していたのだが、「腕や肩の大まかな筋肉はちょっとの筋トレで取り戻せるな」と思うくらいには付きやすくなっていると思う。 (指先の細やかな筋肉まではさすがに楽器でないと付かないが…)

腕の血管が浮いてるのも分かりやすい。

5,体つきがゴツゴツしてくる

これは最近メキメキと感じてきていることなので、お話したい。

以前こちらの記事で「男性の身体と女性の身体の違いは骨盤」「だから骨盤を隠すとFTMの人は良いかも」とお話した。↓

女性の骨盤は横幅が広く、男性のは縦幅が広いという話だ。

そしてこれは骨の話なので、成長期をとっくのとうに過ぎて、これ以上成長しない骨に対してホルモンしても身長同様、意味がない

だが男性ホルモン注射を打ち始めてから2年、最近ここに変化を感じるようになったのだ。

「体つきがゴツゴツする」という文面から「筋肉が付きやすくなって、筋トレしたらマッチョになれるよ」みたいなイメージを抱きがちだが、これは「女性ホルモンによる、女性らしい丸い体つき」が抜けてくるという意味だ。

で、丸みがとれたことにより、最近の僕は骨盤周りが縦長……に、見えるようになった。

お尻周りについていた女性特有の丸みの脂肪が男性ホルモン注射によって抜けて、骨である骨盤の形は変わらないものの、見た目的には男性の骨盤の形に近づいた感がある。

しかもこの変化、シャワー中に気づいたのだ。

服で隠す・手術しか方法がないように思われた首から下の男性化が、男性ホルモン注射の「身体がゴツゴツ」という効果によって叶っている

嬉しい発見だったので書いてみた。

【経験談】「男性ホルモン注射の副作用・その他の変化」と実際の変化

次に「副作用」とされること、または「効果とも副作用とも言い切れない、とりあえず男性ホルモン注射によると分かっている変化」の2つ、マイナス面どう扱えば良いのポイントについてお話していこう。

1,体毛が濃くなる

「ヒゲが生える」効果があるので、体毛が濃くなるのも自然の流れに思える。

僕の場合は元から毛が生える体質だからか、よく分からなかった

男性ホルモン注射自体が「ヒゲよ生えろ!他は生えるな!」という毛の特注には対応していなく、「全体的に濃くなるかもね」「でも遺伝とか体質とかによるよ」という生まれつきに左右されがちなものだと考えると分かりやすい。

2,ニキビが増える

ニキビは頑固。

元々できやすい体質で昔から悩んでいたが、一番ひどかった中学時代に逆戻りした感じだ。

顔が多いが、最近はマスク生活なので、これに拍車をかけている。

ニキビ自体は思春期にできるものと同じなので、予防法や治し方は調べやすいし薬もあるのが唯一の救いだ。

3,ハゲる

ハゲは今のところ感じていない。

髪の毛の毛質は、なんだか変わった感じがする。(具体的には分からないけど、「なんか変わったな?」程度の違い)

これはシスジェンダー(身体的性と性自認が一致している人)の男性が禿げるか禿げないか、禿げるとしたら何歳からかが皆バラバラなように、ホルモン注射をしたトランスジェンダー男性も禿げるか禿げないか、いつ頃禿げるかは人による。

4,クリトリスが肥大化する

クリトリスと男性の陰茎が同じと保健の授業で何かの本で見た記憶があるが、そういうことだ。

見た目が男性器化すると考えて良いと思う。

これもサイズは人によりけりだ。

とりあえずズボンはメンズ用に買い直した方が、股間が痛くて……とかは無くなるのでおすすめだ。

5,性欲が増す

女性の性欲と男性の性欲は、性質が違うな?とホルモン注射をしてから感じた。

ホルモンを打つ前は男性の「仕事や勉強で「集中しよう!」と思っているのに、ムラムラして集中が全然できなかった」に全く理解ができなかったが、打ってからは「分かる」とてのひらを返したように理解ができるようになった。

「このムラムラはどうすれば良いんだ!?」とむしゃくしゃすることもあるが、とりあえず、だからと言って痴漢するやつはあり得ないとは言っておく。

6,精神面・ホルモン切れというマイナス

打ち始めの頃はホルモンが安定しないからか気分が落ち込んだりとかもあったが、最近はそんなことは無くなった。

ホルモンが切れるまでは

ホルモン切れとは、外部から性ホルモンを注入している以上、供給が途切れると起こってしまう現象だ。

「生理が止まる」でも言ったように、ある程度打っていると卵巣が働かなくなり、女性ホルモンも分泌されなくなっていくらしい。

そこで定期的にホルモン注射をしないと「ホルモン切れで体調が悪い・気分がすぐれない」状態が引き起こされる、ということだ。

これも個人差が大きいが、僕の場合は打った日や翌日は調子が良く打つ前日くらいから調子が下がり、何らかの予定が入って注射が予約した日に打てなくて延期になると身体がズーンと重く感じるようになる。

定期的に打てる環境を整えてからホルモン治療に入る、引っ越しする際は通える範囲で良心的な値段でホルモン注射をしてくれる病院をあらかじめ探しておくなどの対策は本当に大事だと思った。

まとめ

今回はホルモン注射2年目に入るタイミングで、効果や副作用で言われていることと実際自分の身に起こった変化を比べてみるという試みをした。

あくまでも経験談だし、ホルモン治療はFTMもMTF(トランスジェンダー女性)も個人差が大きいので一概に「これくらい変化するよ!」と言いづらいものだ。

とはいえ「自分はこのくらいの変化だった」というサンプル数は多いに越したことはない。

「同じ量の男性ホルモン注射でも、この人はこのくらい変化があって、あの人はこのくらい起こったのか……」と比較できれば、自分でも色々シミュレーションできるし、これからホルモン治療に入ろうと思っている人の参考になるかなと思って書いてみた。

自分としては「体つきがゴツゴツしてくる」で話したように、脂肪と筋肉の付き方の変化によって骨盤周りの見た目が裸レベルで男性っぽくなったことに驚いたので、全員に当てはまるかは分からないが、共有したいなと思ったのもある。

「これで胸もしぼんで胸板になれば100点満点なのにな……」と毎日思うが、胸は手術でしかなんとかならないので、とりあえず今すぐどうにかしたい人はこちらの記事も見てみてほしい↓