こんにちは、Miyabiだ。

小学生低学年のときに「呼び捨てはいけない!」と先生に怒られたり、「~さん、~くんと呼びなさい」と授業内で言われたりして

「呼び捨て嫌だって言われてないのに何でダメなんだろう?」

「~さん、~くんって、すごくよそよそしくて変な感じ」

と感じていたが、こと現在になってトランスジェンダーとして「性別」という概念に真っ向から吹きさらされている状態になると

「「~さん」という日本語の敬称って、すごく便利!」

と思うようになったのだ。

今回は日本語の呼び方とジェンダーについて、また英語の敬称と比較して「大事な相手だからこそ、ジェンダーフリーな「-san」を提案できるのでは?」ということについてお話していこう。

日本語とジェンダー

敬称について、英語との比較

「~さん」呼びが便利、と感じたのには訳がある。

「~さん」呼びはジェンダーフリーなのだ。

「~さん」という呼び方って、公でもプライベートでも、どの性に対しても使えるもんね。

英語で敬称を付けるとすると「Miss/Ms/Mrs/Mr」と、「結婚してるか」とか「男か女か」という観点がある。

100年前なら良かったかもしれないが、現在では「結婚してるかどうか」はかなり踏み込んだ話題だし、性別に関しても「男」「女」とパキッと2択にはできない(職業を「会社員か無職か」の2択にできないように)。

実際に使うときは特に「男か女か」を意識するが、中性的な格好の人や、ぱっと見でどちらかを判断できかねる場合、あるいはどちらかの判断はできても本人の性自認(心の性別)がそうではない場合など、英語の敬称は使いづらい。

それに対して、日本語は「~さん」で解決する。

もっと敬いたい場合は「~様」でいけるし、親しくなれば「~ちゃん」でも呼び捨てでもいけるのだ。

「~ちゃん」という呼び方について・5つの場面

「~ちゃん」と聞くと、僕らはまず女性を想像する。

なので「「~ちゃん」はジェンダーフリーっではないのでは?」と感じる方もいることだろう。

女の子には「~ちゃん」、男の子には「~くん」を付けなさいって小さい頃言われたりするしね。

だが「~ちゃん」もなかなかに多彩な敬称だと僕は感じる。

まず「~ちゃん」が使われる場面は主に5つあって、

  1. 親しい女性に対して
  2. 可愛らしいもの、未発達のものに対して(飼っている動物や植物に対して、赤ちゃんに対してなど)
  3. ニュースで幼児が出てくるときに
  4. 年上の人に親しみを込めて(おじいちゃん、おばあちゃん、お父ちゃん、お母ちゃんなど)
  5. 親しい人に対して

だ。

この5つ目の「親しい人に対して」の「~ちゃん」があるのだ。

つまり女性に対しても男性に対しても、あるいは別の性別やアイデンティティの人に対しても、友人であれば親しみを込めた「~ちゃん」を使えるということになる。

「~ちゃん」付けで呼ばれるのが嫌な人もいるので、嫌だったら止める必要はある。
けど、日本語的には「~ちゃん」は「~さん」の親しいバージョンと解釈もできるよ、って話だね。

「~さん」「~ちゃん」の英語使い

今回、日本語の敬称についての内容を書いたのも「最近英語で-san/-chanってよくみるなぁ」と感じたからだ。

もっというと、「Onii-chan」なども最近見かける。(今ネットで検索してみたら「アニメで「お兄ちゃん!」って言ってるシーンがあるけど、どういう意味?」という質問が英語版知恵袋的サイトにあった。アニメや漫画から広まっているようだ。)

日本では儒学の思想が昔からあって、年上を敬うという考えから「~さん」「~ちゃん」といった敬称があちこちで見られる。

英語のMs/Mrがかなり限定的な敬称なのに対して、日本では「~さん」は良く使う日本語ランキング上位に位置するよね。

英語のMs/Mrはお客さんや仕事先の相手、先生など、ピンポイントで敬う時にしか使わない。

だがピンポイントだからこそ、重要な相手だからこそ、「ジェンダーフリーな敬称が欲しいな…」と感じたりもする。

特に、相手がノンバイナリーだったり、中性や無性、クエスチョニングといった男女の2択ではない性のアイデンティティを持っている場合、これはとても大事なことだ。

いきなり日本を知っているか分からない人に対して「-san」というと、文化の押し付けになる可能性がある。

だが、日本語の「~さん」が「-san」として広まっているのであれば、ジェンダーで悩んでいる人に「日本語に-sanっていうジェンダーフリーな敬称がありますよ」という提案ができるかもしれない。

もし相手や友人で「Mr/Msと性別で呼ばれるのが嫌」と悩んでいる人がいたら、「~さん」を紹介してみると良いかもね。

【おまけ】日本語の一人称・三人称について

一人称

英語の一人称は「I」1つだし、他の言語でも似た感じだ。

それに対して日本語は「俺・僕・私・あたし・うち・自分」ジェンダーに分かれていて、その上「わっち・某・拙者・あちき」など時代性や、「おいどん・わし・あし・おら」などの地域性などなど、色んなアイデンティティに合わせた一人称があるのが特徴となる。

なので日本語の一人称は「なりたい自分・ありのままの自分を一人称だけで表現できる」という長所があり、反対に「他人から見た自分と、自分の使う一人称のイメージが合致しないと、それについて指摘されたり怒られたり迫害されたりする」という面もある。

便利な分、リアルの場面では不便だったりもするよね。

三人称

英語では「自分を三人称で呼ぶときこう呼んで!」という記述がある。

僕ら日本での英語の授業では「男性はhe,him、女性はshe,her」と習ったが、上の場合は

  • 性自認、または性表現(ファッションや言動などのふるまいのこと)が男性の人→he/him
  • 性自認、または性表現が女性の人→she/her
  • 性自認、または性表現がその他の人→they,them

と記述される。

これはシスジェンダーやトランスジェンダーといった普段からその性自認で生きている人も、異性装やクロスドレッサーといった期間限定・パフォーマンスで性表現を変えている人も使える。

「they/themは複数形じゃないの?」と驚かれるかもしれないが、この場合は個人に対しても「性別の概念を伴わない三人称」として使用ができるのだ。

they/themの単数形使用に関しては、最近できた使用法だね。

他の言語でも、それまでその人の性別にそって形が変化するものだった言葉(ウエイター、ウエイトレスのような)から、性別の概念を無くした形を作ろうという動きがある。

男性名詞・女性名詞のある言語ではその動きは顕著だ。

話を戻して、日本語の三人称はどうかというと「彼・彼女」が一般的で、ジェンダーフリーにしようとすると「あの人」「あの方」と急によそよそしくなったり、「あいつ」「あれ」と急にぶっきらぼうになったり、じゃっかん使いづらい傾向にある。

「あの人」「あの方」「あいつ」「あれ」でも良いが、中立的な距離感で呼びたいときに名前以外に何か言い方はないのだろうか?というのが、ちょっとした悩みでもある。

僕は、(歴史上の人物は別として)「彼」「彼女」という性別を伴う呼び方は、本人からはっきり性自認を聞いているとき以外は使っていない。

なので今は名前呼びや「あの人」呼びが多いと自覚している。

まとめ

今回は日本語の呼び方とジェンダーについてお話してきた。

英語で「-san」という呼び方を見て「日本語の「~さん」って便利!」と思ったのがきっかけで調べたり考えたりしたが、日本語には「~さん」「~ちゃん」以外にも「~くん」「~たん」「~様」「~殿」「~ちゃま」「~坊」などなど、一人称と同じように敬称の種類が多い

言語はその土地の風土や起こる気象、発展した社会形式、文化などによって「表現の仕方がたくさんある」もの「表現が1つしかない、またはそもそもその概念がない」ものとが変わってくる。

なのでどの言語で思考するかによって結論が少し変わったりもするのだ。

また同じ言語でも社会の変化が起これば新しい言葉が登場するのも世の常だ。

例えば日本語の「自由」は明治以降にできた言葉で、江戸時代までは現代語訳すると「自由」に当たる場合でも「勝手次第」と記述されている。(「権利」の概念が入ってきて、初めて「勝手」と「自由」が区別された)

性別を含めたセクシュアル・アイデンティティについても、これまでは「他人からの判断、他人が見たときの認識」が自分のあるべき姿とされてきたが、これからは「自分の判断、自分の認識が自分のあるべき姿」であり、他人がそれに干渉や強制はできないという価値観になってくる。

なので日本語も「他人が「あんたはこう」というからこれ」というよりかは「自分はこう自認するし、他人からもこう見られたい」を優先して良いのではないかと思うのだ。

誰かの存在を否定する言葉はダメだけど、あなたがあなたの存在を確立するために、使いたい言葉を選択する権利としての自由はある。

江戸時代が終わってから150年以上が経過しているし、大丈夫。