
こんにちは、Miyabiだ。
「声を低くしたい!」と考えるトランスジェンダー、特にFTM(生まれた体の性別は女性だが性自認は男性の人)は多い。
その中でも
「できるだけ自力で声を低くしたい」「まずは自分で低くしたい」
と思っている人もいるだろう。
まずはお金とリスクのかからないところからやりたいよね。
そこで今回は、藝大出のFTMとして 「音」の知識を総動員し、「声を低くする」こと・FTMが自力で声を低くするにはどうすればいいかについてお話していこう。
目次
FTMが声を低くする方法
0、男性ホルモン治療について

自力で、と言っておいてなんだが、やはりシスジェンダー男性と同じ声の周波数を手に入れるには男性ホルモン注射が一番効果がある。
打ち始めて3ヶ月目あたりから声に変化が生じ、1年後くらいに低く声が安定する感じだ。
とはいえ簡単な話ではなく、ホルモン治療をするには事前にFTMの性同一性障害の診断書を用意しておく必要がある。
またホルモン治療に関しても、声以外の部分(ヒゲや生理の停止など)の変化が伴ったり、人によってはホルモン量の変化で体調が悪くなったりなどの副作用が発生する。
また何より、シスジェンダー男性の思春期の頃の声変わりと同じなので、3ヶ月目~1年目あたりの期間は声が安定せず、ふとした瞬間に声が裏返る時期がどうしても発生してしまう。
ホルモン治療で声を低くするのが結果的に一番効果はあるけれど、声が低く安定するまでに色んな段階があるから、途中がめんどくさいよってことだね。
↓男性ホルモンによって声を低音化する段階や詳しいことは、こちらのリンク先の記事に書いてあるので参考にしていただきたい。
ではここから、自力で声を低くする方法についてご紹介していこう。
【自力で声を低くする】1、声について知る

声の高い・低いは声の周波数の問題だけではない。
話し方や発声方法、またはその言語特有の発声方法にも関連してくる。
カラオケで音域の低い歌しか歌えないのに、何故か「声が高い人」認識されたり、またはその逆の人がいたりするのもそのせいだ。
話し方というのは、「○○なんだ……フッ」と「○○なのっ!?」と言い方を変えただけで、前者は「落ち着いてるな(=低めの声認識)」で後者は「かわいいな(=高めの声認識)」となることをいうよ。
つまり、「声を低くしたいな」と思ったときに意識するのは
- 音域を低くする
- 話し方を変える
- 発声方法を変える
の3点ということだ。
順番に見てみよう。
【自力で声を低くする】2,音域を低くする発声練習

では声を低くする1つ目、「音域を低くする」ことについて見てみよう。
音域とは周波数の話で、簡単にいえばカラオケで歌える音の高さの範囲のことだ。
普段あなたが話している声の音域というのは、喉から、一番楽に出せる声の音域になる。
なので音域を低くするには少し練習が必要になってくる。
ここで声楽(オペラなどクラシック音楽の歌)の話をしよう。

声楽というのは人の体1つで高い音域から低い音域までを歌い、それを1600席以上の3階席もあるホール全体にマイクなしで響かせる歌の音楽だ。
僕も学校の副科で声楽をとっていた時期があるが、初心者はまず発声練習から入る。
発声練習と声を低くするのと、どう関係があるの?
美少年くんの言うように、「大きい声を出す発声って声を低くするのと関係ないじゃん!」とお思いの方もいるだろう。
ところがこれがとても関係がある。
先ほど、普段出している声は、喉から一番楽に出せる声だという話をした。
声楽は喉からではなく腹、つまり腹式呼吸で、体のどの部分に声を響かせれば高い音域・低い音域が出るか、といった自分の音域の限界まで使って歌う。
そして声楽の発声法は音域が一番広がりやすい。
音域を広げる発声練習やり方(ちょっと長くなるので「面倒くさいよ」という方は飛ばして、先に下にある「話し方を変えよう」から読んでほしい)

1,口を使うと「喉から」になりやすいので、ここでは口を開けつつも「んんん~」と鼻の裏側から声を出す。
2、「んんんんんんんんん~(音:ドシラソファソラシド~)」「(んんんんんんんんん~(音:シラソファミファソラシ~)」「んんんんんんんんん~(音:ラソファミレミファソラ~)」と歌う。
自分の出せる一番高い音域から、かたまりごとに1音ずつ、あるいは半音ずつ下げていく。限界まで階段のように下げていこう。
この練習はピアノやシンセサイザーアプリなどと一緒にやると良いだろう。
3、息を胸からではなく、横隔膜からできると、力強い印象の声になるし音域も広がる。
これが声楽の初心者の発声練習だ。

口を開けつつ「んんん~」と鼻の裏側から声を出すと、音域を広げたり、声を響かせたりするのに重要な
- 喉を開く
- 横隔膜から歌う(息をたくさん使う歌い方なので、腹式呼吸の方が楽に歌える)
というのを習得しやすい。
腹式呼吸じたいの練習の仕方についても調べてみると、効果がちゃんと出るよ。
気が付いたときに意識的にこの練習をすると、1カ月もすれば低い音域の出し方・発声の扱い方がだんだん把握できてくる。
【自力で声を低くする】3、話し方を変えよう

では次に「話し方」について見ていこう。
話し方は意外と重要だ。
「今日は水族館にいくよっ(語尾を上げる)」
「今日は水族館にいくよ(語尾を上げない、あるいは下げる)」
この2つは同じ内容だが、話し方が変わっている。
語尾を上げると、可愛い印象、あるいは声が高い印象を与えられる。
重要なことだが、基本的な周波数の低い男性の声だと、語尾を上げても「かわいいな」となるだけだが、基本的な周波数の高い女性の声だと「女性的だな」という印象もくっついてきてしまう。

FTMで自力で声を低くする場合は、基本的な周波数は高い状態なので、この語尾の話し方に気を付けると良いだろう。
同じ「今日は仕事ある日?」という質問でも「ある日↑?」と語尾をくいっと上げると声が高くなるので、「ある日→?」と低い声を保てるようにするとだいぶ変わる。
同じ話し方でも「俺」「私」などの性表現については、こちらの記事に書いてある。ついでにぜひ。
【自力で声を低くする】4,発声方法を変える

音域を下げる発声練習に似ているが、これはホルモン治療をして基本的な周波数を低くしたFTMにも言える内容だ。
女性の発声方法は、
- 声の方向→頭部・鼻など上の方に抜ける
- 発声源→喉を閉める
といった、声が高く聞こえる発声となっている。
基本的な周波数が低くなったとしても、この発声方法が変わらないと「声が高いな」「女性っぽいな」という印象が抜けない。

なので
- 声の方向→胸部など下の方に抜ける
- 発声源→喉を開けて、横隔膜から
という発声法に意識的に変えるといいだろう。
ここでさっきの発声練習が生きてくるってことだね。
伏線を回収したところで…
やはりホルモン治療をした・しないに関わらず、小さい頃から染みついた「一番楽な喉から発声」を変えていこうという話になってくるので、練習をしないことには始まらない。
逆に、練習をすれば変えていくことができることなのだ。
色んな要素が集まって「低い声」という現象が起こるので、まずはここでご紹介した「音域」「話し方」「発声方法」の3つから練習してみるのをお勧めしたい。
まとめ

今回は自力でFTMが声を低くする方法についてお話してきた。
無理をして低い声を出そうとすると喉がつぶれたり、あるいは「モソモソしてて聞こえづらいな…」という印象を与えてしまったりする。
なので普段からの発声練習などをおすすめしたいのだ。
今思い出したが、藝大の声楽科のバリトン専攻(すごい低い声の男性の歌声)の人で「モソモソしてて聞こえづらい」話し方の人はいなかった。
みんなすごい低い声なのにすごく聞き取りやすいエエ声なのだ。
この人たちも実際の歌の練習の前には発声練習をしている。
それにイタリア語などの歌詞をはっきりとホールの3階席の奥の方まで、マイクなしで届ける仕事でもあるので、「言葉を届ける」「良い声を出す」「響く声を出す」意識がずば抜けている。

FTMなので「本来あるはずだった男声を手に入れる」というのが目的だが、それと同時に「相手とコミュニケーション・意思疎通をとる」のが会話の目的となる。
バリトン歌手たちの「低音を出す」方法と「言葉を届ける」意識を僕たちもマネしてみれば、オペラ歌手にはなれなくても、「声を低くしつつ、さらに何言ってるか聞こえる」話し方をできるのではないか?
というのが僕の考えだ。
今回は声の話だったが、FTMのファッションについての記事はこちらにあるので、併せてぜひ。