
こんにちは、Miyabiだ。
トランスジェンダーや性別違和(性同一性障害、性別不合)で
「自分の性自認は生まれた体の性別と違う!」
と既に確信した状態だけど、後で「やっぱりあのとき確信した性自認とは違う性別かもしれない…」となることはあるのだろうか?
簡単に言えば、「性同一性障害(GID)」の診断書を貰って「自分は男だ/女だ」と確定した後に、「やっぱり違うのでは…?」となる可能性はあるのだろうか、という話だ。
性別は簡単に処理されがちだが、「あなたらしさ」を決める重要な項目の1つだ。
今回は診断書などで自分の性別を確定した後に「やはり違う」と性自認がゆれることはあるのか、ということについて考えていこう。
目次
性別違和と性自認のゆれと思い込み
性別のゆれは起こる?

先に答えを言うと、「ある」だ。
それは自身の抱いている「性別に対する違和感」の原因が「性自認」ではなかったということでも起こる。
だがもう1つ重要なのは、「性自認」が「性別の違和感」の原因だった状態でも起こり得るということだ。
「性同一性障害」と診断書をお医者さんに貰い、ホルモン治療や性別適合手術を終え、自身の性自認の性別に体を近づけ終えた時点で
「あれ?なにか違う」「体の性別の違和感が消えない」
となることさえあるのだ。
何故このようなことが起こるのだろう?
性別のゆれは色んな「定義」で起こる

性自認は、あなたの認識で左右される。
周りの人が「男でしょ」「女でしょ」と言っても変わらないのが性自認であり、それは診断書を出すお医者さんでさえもそうなのだ。
あなたが「自分は男だ」と言えば性自認は男になるし、「自分は女だ」と言えば性自認は女になる。
つまり、あなたが世界に対して考えている「定義」が、そのままあなたの性自認に反映するということだ。
詳しく見てみよう。
「性別は男女の2つだけ」としている場合

例えばあなたが「世界に性別は男女の2種類だけだ」と定義していれば、
「自分は男か女のはず」→「生まれた体の性別に違和感があるということは、逆の性別が性自認のはず」
と性自認を導き出すことになる。
もし本当はXジェンダーであれば、性別を変えたところで性別への違和感は消えない。
なので「今の生まれた体の性別に違和感がある」という場合は、逆の性別の他にXジェンダーについても調べて、しっくりくるかどうか確認してみよう。
「男性は」「女性は」「Xジェンダーは」

性自認がしっかり確定していても、周りが
「男性ならもっとムキムキであるべきでは?」
「女性ならもっとおしとやかにすべきでは?」
「Xジェンダーならもっと中性的なかっこうであるべきでは?」
という価値観をもっていて、あなたがそれとズレた見た目や性格の場合にゆれが起こる可能性がある。
「自分は男性だけどムキムキじゃない」→「あれ?自分って本当に男なのか?」
という具合だ。
ジェンダー(社会的・歴史的な性別の役割)とセクシュアリティ(性の在り方)の区別がしっかり付いている人でも、周りや世間からの「~すべき」という圧力で揺らぐことがある。
もしあなたが「確定している」と感じている性自認がゆらぐようなことが起こったら、「これはジェンダーか?セクシュアリティか?」と、一度落ち着いて確認作業をすると良いだろう。

もしセクシュアリティであればもう一度性自認について考えると解決するかもしれない。
もしジェンダーであれば、ひとまず「自分は自分なんで」として、どうしても気になるなら「保留」として時間をかけて吟味してみよう。
性別は「ゆれるもの」

Xジェンダーの中に「不定性」という性自認がある。
これは時と場合によって男性・女性・中性・間性・無性など、性自認がゆらぐ性別のことだ。
もし「男性」「女性」「間性」など1つの性別に確定するのがしっくりこない場合は、この不定性の可能性を探ってみよう。
また、「ゆれるもの」でもなく「性別という定義そのものがしっくりこない」「性別ではなく自分にしっくりくる生き方が良い」という場合は、ノンバイナリーについても見てみると良いだろう。
追記・Xジェンダーと診断

ところで、「性同一性障害」は「トランスジェンダー」とは違って診断名、つまり医療用語だ(現在「性同一性障害」という用語はWHOが「精神病」から削除し、新しく「性別不合」という項目を設けるとのこと)。
「性同一性障害」の診断書も治療目的であり、その治療方針も「男性によせる」「女性によせる」の2種類である。
何故なら治療方法が主に「ホルモン治療」になるからだ。
男性ホルモンを打つと、声が低くなったりヒゲが生えたり「男性の身体的特徴」が出てくる。僕は男性ホルモンを打って1年半になるが、男子中学生に起こる体の変化のようなことが再現される。
女性ホルモンを打つと胸がふくらみ、丸い体つきになり「女性の身体的特徴」が出てくる。
これは性自認が男性、または女性の人にはおおよそ適している治療だ。
が、Xジェンダーの場合はそうではないことも多いだろう。

このような事情により、Xジェンダーに診断書を出したり治療を提案したりするお医者さんが少ないのが現状だ。
Xジェンダーでホルモン注射を打ちたい方は、慎重に病院を探す必要が出てきてしまう。
診断書という「お墨付き」を貰いづらいことから人によっては「性自認がはっきりしていない感覚」があったり、Xジェンダーに理解のないところでは無理やり男性・女性の性自認として診断がされてしまったりすることもあるのだ。
これが原因で「性自認のゆれ」が出てくる可能性もあることも、頭のすみに置いておきたい。

Xジェンダーでも「男性や女性の身体的特徴をなくしたい」「改名に必要な書類が欲しい」など様々な理由で診断書を必要とする方がいる。
今回「診断書を貰った後での性自認のゆれ」についての記事なので、Xジェンダーという病院で治療法の確立していない性自認のことも書いておきたかった。
性自認は先ほど言ったようにあなたの認識の問題だ。
世の中に性別はたくさんある。
一番しっくりくる生き方を見つけよう。
まとめ

今回は性同一性障害(GID)の診断書を貰ってから性自認はゆれるのか?についてお話してきた。
これはFTM(生まれた体の性別が女性で性自認は男性の人)の診断書を貰って、ホルモン治療もしている僕にとっても重要な議題だ。
診断も治療もする前に「高い声を低くしたい」「胸をなくしたい」「ヒゲは面倒そうだなぁ…」など、自分の希望と治療によって得られる特徴を比較してみると良いのかもしれない。
「ヒゲ」は男性の身体的特徴の1つだが、「ヒゲの処理が面倒」と考える男性は多い。
なので「ヒゲは面倒そう」と考えても自分の性自認には関係ない……といった具合だ。
ホルモン注射も性別適合手術も、始めると後戻りできない治療なので、僕らトランスジェンダーは「性同一性障害」として治療を開始するか、手術もするかを慎重に選んでいきたい。