こんにちは、Miyabiだ。

トランスジェンダーを始めLGBTq+当事者の1つの難関が、親へのカミングアウトだ。

最近ではLGBTq+も認められつつあるが、親というのは2周りも3周りもジェネレーション・ギャップがあるもの。

なので「親にカミングアウト」で調べると

「認めてもらえなかった」「「あり得ない」と信じてもらえなかった」「勘当になってしまった」と、悲しい結果になってしまった方も少なくないようだ。

ところで僕の場合はタイトルにあるように、結果的にカミングアウト前に比べて親との関係が良好になった。

「親へのカミングアウトは失敗例だけじゃない」「成功例もあるんだ」という前例としての希望を、トランスジェンダーの方に伝えたい。

今回は僕の経験から、親との関係が良くなるカミングアウト・少なくともできるだけ良い結果になるカミングアウトについてお話していこう。

最難関・親へのカミングアウトへの準備

親へのカミングアウトが1番難しい

トランスジェンダーに限らずLGBTq+の方は、親へのカミングアウトが1番難しいと感じているようだ。

実際、親にカミングアウトする割合よりも、友人にカミングアウトする割合の方が高くなっている。

これは年齢や考え方の近い友人の方がカミングアウトを受け止めてくれやすいからだと考えられる。

親は近いところにいながらも年齢は離れているし、考え方も近いかどうかは分からない

友人は選べても親は選べないというのが、ネックとも言えるかもしれない。

僕も最初のカミングアウトは友人だった。

親にカミングアウトしようと思ったキッカケ

僕にとって親は、本心を言ったら怒られるものだった。

昼間は楽しく遊んでいたけど、その後の勉強などで具合が悪くなったときに「元気に遊んでいたのに何で具合悪くなるの?」と咎められたりしたからだ。

それ以外でも自分の性別に違和感がある人にはあるあるだろうが、「多分自分以外はこんなこと理解できないんだろうなぁ」と言った思いから、親のみならず親しい友人以外の人に本心を見せないように生活をしていた。

なので、カミングアウト前の親との関係はギスギス、というか、すれ違っていたように思う。

ところが大学生くらいで「自分がトランスジェンダーだ」と完全に自覚したとき、「親に言わなくては…」と思った。

自分の精神的にホルモン治療をして男性に近づけたいのだが、そうするとどうしても声が低くなったりヒゲが生えたり、外から見て分かってしまうからだ。

また、同じ精神的な面で、性自認と一致しない戸籍の性別をいつまでも演じていたら苦しいと言った理由もあった。

同時に、僕はアーティストなのだが、本心を言えない状態だと作品創りでも自分の考えを乗せられないことにもどかしさを感じていたのもある。

親へのカミングアウトについて調べると、LGBTq+への偏見から拒否されたり勘当されたりと言ったエピソードがずらりと出てきて尻込みしてしまいそうだった。

だがよく見てみると、これらのエピソードを伝えていたのは僕よりも1周り年上の方ばかりだったのだ。

つまり、僕の親は彼らの親よりも、1周り若いことになる。

LGBTq+への偏見も薄れてきているのではないか?

これもカミングアウトのきっかけとなった。

親へのカミングアウトの準備

とはいえ、色々カミングアウトに際して準備することがある。

それは親のLGBTq+に対する意識調査自分の心の整理だ。

自分の心の整理は、自分史を書いたりして「この性自認で間違いないか?」「今までどんな出来事に対してどう思ってきたのか?」を何度も確認するのだ。

親のLGBTq+に対する意識調査は色んな方法がある。

メディアでLGBTq+の話が出てきたときに極度な偏見は出ないか、自分の仲の良い「友人」がLGBTq+だ(自分と同じのが良い、僕の場合トランスジェンダーの友人について話す)と話したときにどんな対応をしてくるか、などだ。

情報が無ければ間違った認識になっている可能性もあるので、「違うよ、LGBTq+は〇〇だとは限らないよ」などと修正をしてあげる。これに対する反応も見てみよう。

ここで話を聞いてくれない、貶めるくらいの偏見が出たらカミングアウト計画は中止

僕は実際友人に性別の観念が柔軟な人がいたので、「一緒に遊んだ子でこんな子がいて~」と親にその子の価値観を話してみた。

すると

「へぇそうなの」「どんな子?」と普通に返って来た

トランスジェンダーと同性愛を混同する昔の見方が入っていたので「トランスジェンダーみたいな性自認とゲイやレズビアンみたいな恋愛対象は、別物なんだよ」と訂正すると「あぁ、そうなんだ」と間違いを認めてくれた

これはいけそうだ。計画を1つ進めることにした。

カミングアウトをする直前

ジャブを打つ

カミングアウトは親のタイミングや価値観も大事となる。

親の転職前や手術前など、親自身の大変なことが起こっている最中は様子見をしよう。

あくまでも日常にいるタイミングを見計らうのだ。

僕は親に極度の偏見がないと確かめたとはいえ、「自分はLGBTq+でトランスジェンダーで、男なんです」と一気にカミングアウトする勇気はなかった。

なので「胸を取りたい」「子宮をとりたい」「男に生まれたかったんだよね」と、LGBTq+を知らなくても想像しやすい言葉でジャブを打ってみることにした。

カミングアウトで得たいのがLGBTq+である自分に対する理解と居場所であるとするなら、ジャブは「こんな考えがありますよ」「こんなこと普段考えているんです」といったカミングアウトに行くための補強だ。

いきなり「結婚しよう!」と言う前に、部屋にゼクシィを何気なく置いといて「意識してます」となんとなしに伝える感じと似ている。

僕の場合、これらのジャブは全て冗談として捉えられた。

ジャブなので仕方がない。

だがこのままカミングアウトという右ストレートを打つのに不安があった。

カミングアウトは真剣で真面目で正直な告白なだけに、これを「冗談」とかわされたらもう打つ手がない。

ここでもう1つ計画に項目を増やした。

第三者の意見を持ってくる

お医者さんの出した診断書があれば、親も真剣に捉えてくれるだろう。

そう思った僕は性同一性障害に強い精神科に診断書を取りに行った。

この方法はFTM(生まれた体は女性で性自認が男性の人)やMTF(生まれた体は男性で性自認が女性の人)、つまり結果、男性・女性の性自認を持つ人しかできない。

Xジェンダーやノンバイナリーの方は「トランスジェンダー」であっても「性同一性障害」の診断はでないので、その場合は病院ではない機関への相談をすると良いだろう。

LGBTq+専門のホットラインや、トランスジェンダー専門の相談を受け付けている会社がある。

とにかく、「LGBTq+に詳しい」誰かに相談してみるのだ。

友人や知り合いではない病院や会社、窓口に自ら電話なり直接会うなりしたというだけで、真剣度合が増す

僕の場合、親は法律をやっているので「自分の意見だけではない、外部の信用のおけるソース」という論文の手法が通じると踏んだ。

診断書、自分史、トランスジェンダーについての冊子やサイトのリンク、もしホルモン治療や性別適合手術をするとしたらの概要まとめ、これらを用意していよいよカミングアウト本番となった。

カミングアウト本番

実際にカミングアウトをしてみる

本気の話しをするときはいつだって緊張してしまう。

診断書やら冊子やらを用意できるだけ用意しておいて良かったと思った。

結果を言うと、これだけ用意して「LGBTq+についてちゃんと勉強した」というのを見て分かるようにしたからか、「冗談ではないのだな」としっかり話し合いができた。

もちろん親は当事者ではないので、「何で?」「こうじゃないの?」「治療とかせずに、思いを作品にぶつけて解消…というわけにはいかないの?」と来た質問に1つ1つ答えた。

そして、何故カミングアウトをしたか性自認の方を我慢して生まれた体の性別で生きられないのかについて伝えた。

これが性別を変更したい一番の理由だからだ。カミングアウトする上で、ここを忘れてはいけない。

本心を言葉にして親に伝えたのはほぼほぼ初めての経験だった。

「理解はできないししてやれないけど…とりあえず分かった」

全身が緊張から解けた。

「本心って言って良かったんだ」

考えてみればLGBTq+でなくても、人間関係において「完全に相手を理解」するのは難しい

「自分がされて嬉しいことを相手にする」「自分がされて嫌なことは相手にしない」というのは、相手の考えや価値観などが自分と完全に一致していない限り、かなり独りよがりなことになってしまう。

でも考えや気持ちを「とりあえず分かる」ようにするには、相手にどう感じるか、どう考えるかを聞くのが大事なのだ。

なので本心を言葉にするのは人間関係においてお得なことではないか?と、カミングアウトをしてみて感じた。

まとめ

今回は僕の経験から、カミングアウトの手順についてお話してきた。

あまり話さずすれ違いぎみだった親との関係が、これがきっかけで本心を言葉にできる関係になった。

とはいえ、ここで紹介した手順にそって行動すれば誰でもカミングアウトが成功するというわけではない

もしかしたら失敗してしまうかもしれないし、勘当されるかもしれない。

本心を話せた僕は、作品制作においても本心を「隠さねば…」という障害は外れ、自分自身を題材にすることができた。

カミングアウトは「しなくてはならないもの」ではないので、こればかりはあなたの目的を見直したりして、どちらの結果になっても後悔のない選択をしていただきたい。