
こんにちは、Miyabiだ。
僕はトランスジェンダー男性でLGBTq+の1人として、どんな人でも自分らしく生きられるお手伝いをしたいと、ブログを書いたり、画家として作品制作をしたりしている。
「身近に性同一性障害の人がいるのだけど、どう話せば良いか分からない…」
「自分の子どもがトランスジェンダーだけど、どんな言葉をかければ傷つかずに本人の考えを聞けるのだろう?」
近くに性同一性障害(GID)やトランスジェンダーの人がいると、こんな悩みを持つ人もいることだろう。
「その人のことが人間として好きだけど、LGBTq+のことは分からない」「何か気を配らなければいけないのか?」などなど、家族や友人、仕事を一緒にする人などが当事者のときに心優しい方は良い関わり方を探しあぐねてしまうかもしれない。
僕は当事者なので「本当は自分は男なんだ」と親や友人、先生などにカミングアウトを経験している。特に親とはかなりじっくり話し合った。
今回は身近に性同一性障害やトランスジェンダーの人がいたとき、どう声をかければ良いのかについてお話していこう。
目次
性同一性障害とトランスジェンダーとは?

「性同一性障害とトランスジェンダーは違う意味なの?」
そう疑問に感じた方もいるだろう。
テレビや漫画などで「この人はトランスジェンダーだろう」という場合でも「性同一性障害」と呼んでいることが多いので、この2つを混同してしまう人も大勢いる。
このことから誤解が生じ、目の前にいる当事者と会話が食い違ってしまう事態が起こってしまいがちだ。
大事な人との会話をスムーズにするためにも、まずはこの2つの言葉の違いを見てみよう。

性同一性障害とはGIDと言って、医療用語だ。
性別不合・性別違和とも言って、「生まれた体の性別と心の性自認が一致しなく、一致させたいと感じている状態」の意味となる。
お医者さんが性別を適合させる治療をするため診断書を出す場合、「性同一性障害(GID)」という名前で記載される。
女性の体に生まれて男性の性自認の人をFTM(Female To Male)、男性の体に生まれて女性の性自認の人をMTF(Male To Female)と横に一緒に記載される。
僕の場合は女性の体に生まれたが性自認は男性なので、「性同一性障害、FTM」となる。
ではトランスジェンダーとはどういう意味だろうか?
トランスジェンダーとは、「生まれた体の性別と心の性自認が一致しない人」のことだ。
こういうと「性同一性障害と何が違うの?」と思ってしまうだろう。

分かりやすく言うと、大きな「トランスジェンダー」の円の中に「性同一性障害」が含まれている、という感じだ。
性同一性障害が「一致させたい」と医療行為を意識しているのに対して、トランスジェンダーは医療行為をしたい人も医療行為をしたくない人も含んでいるのだ。
よく誤解されることなのだが、トランスジェンダーが全員「心の性別に合わせて、ホルモン治療や性別適合手術をしたい!」と望んでいるわけではない。
もう1つの大きな違いは、トランスジェンダーにはXジェンダーも含んでいる、ということだ。
「生まれた体は女性/男性だけど、心の性自認は中性/無性/両性etc…だ」という人もトランスジェンダーとなる。
Xジェンダーについてはお医者さんが診断できないことになっているので、性同一性障害という医学区分とならない状態、と考えると分かりやすいだろう。
どう声をかけると良い?
当事者との関係性によって、どれくらい踏み込むかは変わってくるだろう。
ここでは踏み込んでいる内容~誰でも気軽に言える内容の順に紹介していこうと思う。
1、どれくらい本人は調べているのか?

当事者は物心ついた頃~思春期にかけて性別について悩むことが多い。
1人で悩みを抱える人も多いが、家族や親友など信頼できる人に悩みを打ち明ける場合もある。これは本人の性格によることだろう。
「実は自分は生まれた性別は〇〇だけど、本当は××なんだ」
「胸/子宮とりたい」「男性器とりたい」
など言い方は様々だ。
このとき、本人の気持ちを「そうなんだ」と受け止めた後、確認しておきたいことがある。
それは、本人はどれくらいトランスジェンダーについて調べているのか、ということだ。

というのも、LGBTq+についてすっかり調べて、他の当事者に話を聞いて、自分でも自己分析を何回もやって答えを確定させてからカミングアウトする人もいれば、「何か分かんないけど違和感がある、自分の性別が原因かもしれない」とまだまだ気づいた段階で相談をしている人もいるからだ。
性別に違和感が強く感じるきっかけは、実はトランスジェンダーであること以外にも原因があったりする。これは下のリンク先の記事に詳しく書いたので参考にしていただきたい。
また、結果的にトランスジェンダー・性同一性障害だったとしても、自分の体の意にそぐわない変化、周りの扱い、「世界で自分だけがおかしいのではないか」といった不安や混乱があったりする。
いずれにしても、情報を得られるということは精神の安定につながる。
もしあまり情報が得られていない状態のようだったなら、当事者の悩みを根本から解決するためにも、メンタルを安定にするためにもトランスジェンダーや性同一性障害、併せてLGBTq+についてたくさん調べるように勧めてみると良いだろう。
かなり調べ尽くして確信を持ってカミングアウトしている様子であっても「どれくらい調べた?」と確認することによって、大事な人にあなたが「適当に流そうとはしてない」「ちゃんとした情報を得ようとしている」と伝えることができ、本人も安心することができるだろう。
僕は確信を持ってカミングアウトした方なのだが、そのとき法律を扱っている母親が「ちゃんと調べた?」「今こんな法律があるけど、Miyabiから見たらどう感じるの?」など言ってくれたことで「理解しようとしてくれている」とマイノリティであることの不安感が軽減したものだ。
2,何か手伝えることある?

友人や職場の人であれば、「重く扱うべき?気にしてない風にすべき?」「そこまでプライベートに踏み込んでしまっては失礼だ」と感じることもあるだろう。
このときにベストな声掛けが「何か手伝えることあったら言って」だ。
トランスジェンダーや性同一性障害の人がカミングアウトする理由は様々で、「隠すのがしんどくなったので」というだけの場合もあれば、「〇〇で問題があるから解決するために手伝ってほしい(制服やトイレ、更衣室のことやセクハラ問題など)」と実際的な頼み事がある場合もある。
このどちらであっても、あなたが「家族や恋人のようにずけずけといくのは…」と遠慮する気持ちを大切にしている場合でも、「何か手伝えることがあったら言って」と伝えておくとスムーズにいくだろう。
トランスジェンダーや性同一性障害は性自認に合わせるために体を手術する人もいると先ほど言ったが、そのためしばらく出社・登校を休むという事情も出てくる。
性自認ゆえにどうしたいかは人によって変わってくる。
「何か手伝えることがあったら言って」と声をかけてくれる人がいるというのは、安心して働いたり学習したり生活することに繋がる。
3,どの性別で扱うと良い?

「トランスジェンダーや性同一性障害だと打ち明けられたのは良いけど、どう扱えば良いの?彼・彼女とか三人称はどう呼べば良いの?」と後からふと疑問になることがある。
なので、どの関係性であっても男性・女性・Xジェンダー・ノンバイナリーなど、どの性別で扱うと良いのか、三人称や名前などはどう呼べば良いのかをついでに聞いておくと便利だ。
トランスジェンダーや性同一性障害の人で名前が生まれた体の性別に寄ったもの(~太郎、~子など)の場合、性自認に合わせた通称を持っている人もいる。
性自認や呼び名を確かめておくと、普段の会話もスムーズになる。
4,無理に言葉をかける必要はない

どんな言葉をかければ良いかについて紹介してきたが、もしそこまで親しくなく、学校や職場ですれ違うくらいである場合もあるだろう。
この場合は無理にトランスジェンダーや性同一性障害に関係する言葉をかける必要はない。
あなたは普段、知り合いに会釈や挨拶をするだろう。
友だちになりたいと思ったら挨拶から世間話や趣味の話などから入るだろう。
それと同じで良いのだ。
トランスジェンダーや性同一性障害も特殊ではなく「普通の人」だ。
これはダメ?ちょっと傷つく言葉

「良かれと思って言ったのに傷つけてしまったみたい…」となることもあるだろう。
人間関係は人によって傷つくポイントが違うので、このように夜に布団の中でふと「傷つけてしまった…?」と不安になることは誰しも経験があることだと思う。
とはいえトランスジェンダーや性同一性障害には差別の歴史があって、そのときにできた言葉や概念が未だにメディアの影響で残っている。
ここではトランスジェンダーや性同一性障害が傷つく可能性がある言葉について取り上げていく。
1,オカマ、オナベ

「オカマ」「オナベ」と自称する人もいるが、「侮辱されている」と感じる人も少なくない。
僕はテレビや漫画で「オカマ」や「オナベ」というワードは「気持ち悪い」や「面白おかしいキャラ」とセットで使われている印象が強くあるので、例え言われているのが他人でも気持ちのいいものではないと思ってしまう。
「オカマ」という言葉は古く鎌倉時代の書物から江戸時代、明治時代と登場している。
登場の仕方も「男色」の意味、つまりゲイを指して「オカマ」と言っているのだ。
それがMTF(生まれた体の性別が男性で性自認が女性の人)をも指す言葉として使われているということから、トランスジェンダーといった性自認と、ゲイ・レズビアンなどの性的指向(恋愛対象)が混同され勘違いされてきた歴史が見える。
また古い書物に出てくる男色の意味の「オカマ」も、「性交したい」「寝たい」など性的に男性が消費されている描写とセットになっている。
LGBTq+は性のアイデンティティについての言葉だが、性的に消費されたいわけではない。
このことから「オカマ」、そこから派生した「オナベ」という言葉自体に気持ちの悪さ・差別のかおりを感じてしまう人は当事者にも当事者でない人にも多い。
本人がプラスの意味合いで自称している場合でないのならば、使うのは避けた方が大事な人との関係にヒビが入らずに済むだろう。
2、本物の男/女に見える!

トランスジェンダーや性同一性障害の人を褒めるつもりで
「本物の男に見える!」「本物の女の子みたい!」
と言っている方はいないだろうか。
当事者の僕らもその言葉が善意から出ていることが本当に分かるので、「やめて」と言いづらいのだが…
「本物って何…?」
と思ってしまうのが本心だ。
性自認が男性/女性である時点で、本物の男性/女性なのだ。
「本物の男/女に見える!」というのをひっくり返すと、「偽物だけどね」という前提が存在してしまっている。
きっとあなたが言いたいのは「シスジェンダー(生まれた体の性別と心の性自認が一致している人)に見える」ということだろう。
このことを「パス度が高い」とも言う。
「専門用語ばかりで使いづらい!」と思った方もいるだろう。
僕もそうだ(笑)。
なのでここは「見た目を褒める」と置き換えるとスムーズなのではないだろうか。
「その服、似合ってる!」「その髪型カッコイイ!」「今日のメイク、可愛いね!」
服や髪型、メイクは本人が選んだり努力をしたりしていることなので、褒めるポイントとして誰でも共通で無難だ。
LGBTq+は「LGBTq+」として扱ってほしいというよりかは「普通の人間として扱ってほしい」という人がほとんどなので、普通に友人を褒めるときと同じで良いのだ。
3、もったいない…

生まれた体の性別で生きていた時代を思い出して「可愛かったのに…」「かっこよかったのに…」「もったいない…」と言う方もいらっしゃる。
例えで考えてみよう。
トランスジェンダーでも、そうでない方でも「子ども時代」はあったはずだ。
その子ども時代を知っている人に「可愛かったのに…」「(大人の体になって)もったいない…」と本気でガッカリした口調で言われたとしたら、を想像してみてほしい。
親戚間の冗談で楽し気にこんな会話が起こることもあるが、そうではなく「ガッカリ」「悲しい」空気を含んで言われたとしたら
「人間だから成長するし、子どもの姿だったのは子ども時代だったからだ」
「今は大人なのだから今の自分を見てほしい」
と思ったのではないだろうか。
トランスジェンダーや性同一性障害も同じで、「今の自分を見てほしい」と思っている。
もし「生まれた体の性別のとき、可愛かった/かっこよかった」とあなたが思ったとしたら、「昔も今も素敵だ」など「今」もちゃんと見ていることを伝えると、あなたの思いが伝わるだろう。
アウティングはやめておく

本人の希望なく、第三者に「あの人はLGBTq+だ」と言うことをアウティングという。
あなたが良かれと思ったとしても、世間ではまだまだLGBTq+に対する理解は進んでいなく、もしかするとそのアウティングのせいで、あなたの大切な人がいじめや暴力を受ける可能性がある。
本人にも伝えるタイミングや人選びがある。
なので、本人から「伝えておいて」と言われていないのなら、あなたは無理に他の人に「あの人はトランスジェンダーだ」と伝えなくて良いのだ。
まとめ

今回はトランスジェンダーや性同一性障害の人にかける言葉について紹介してきた。
結局、「特殊な人」扱いではなく、「普通の人」として「打ち明けてきたからには何か悩みがあるかもしれない」と接すると会話がしやすくなる。
こう思うことであなたも、目の前にいる人について理解しようとすることができるのではないだろうか。