
こんにちは、Miyabiだ。
ニンテンドースイッチやPSVitaなどで発売された「グノーシア」というゲームが人気を伸ばしている。
これは1人用宇宙人狼ゲームと呼ばれていて、ゲーム内に登場する14人のキャラクターといっしょにプレイヤーが仲を深めたり、キャラクターのこと・グノーシア(このゲームにおける人狼)のことを知ったりしながら、宇宙船の中で議論をして人狼を探すゲームだ。
数多のゲーム実況やゲーム記事で取り上げられていること、キャラクターのファンイラストも多くネットにあることから、このゲームが秀逸であることが分かる。
かくいう僕も去年の緊急事態宣言で自粛中にダウンロードして、ゲーム初心者ながら完全クリアできた。
プレイして分かったことは、ゲームの作りや設定、隠し要素などが全て14人のキャラクターの魅力を最大限に引き出すようにされていることだ。
この14人中2人、「汎」という性別のキャラがいる。
今回は宇宙人狼「グノーシア」のキャラクターの魅力要素である性別「汎」について、お話していこう。
目次
グノーシアのゲーム概要

※本筋ストーリーのネタバレはしないが、サイドストーリー・キャラ設定については話すので「一切を自分で切り開きたい」という方はクリア後の閲覧をおすすめする
宇宙船を舞台にした人狼ゲームで、14人いるキャラクターとともに議論をして人狼=グノーシアを探してコールドスリープさせるのを目的としている。
この議論と議論の間の休憩時間、ゲームとゲームの間では14人の中の1人に会いに行って仲を深めたり、アドベンチャーゲームとしてのストーリーが展開したりする。
1ゲーム終われば完全終了する人狼ゲームの性質と、ループものとして進行していくストーリーを通して登場人物について理解していくアドベンチャーゲームの性質、プレイヤーが15人目のキャラクターとしてゲームに参加するロールプレイングゲームとしての性質が合わさっているのが特徴だ。
簡単に言うと、1人でいてもゲーム内にいる14人の特徴的なキャラクターについて知りながら、人狼ゲームをしていく感じだ。
そして僕のようなゲーム初心者でも安心して遊べるように最初に声をかけてくれるキャラクターが「セツ」である。
ゲームにとっての「性別」
初期設定での性別

ところで僕はLGBTq+のT、トランスジェンダー(生まれた体の性別と心の性自認が一致しない人)で男性なのだが、グノーシアのゲームを立ち上げたときに「これは…」と思ったことがある。
それがプレイヤーの性別設定だ。
「男・女・汎」とある。
こういうゲームではプレイヤーの性別ごとにサイドストーリーに恋愛シナリオが用意されていることがよくある。グノーシアでも自身の性別に関係なく男女ともにプレイしてみると、違う演出・特殊イベントを楽しむことができる。
だが面白いのは、「汎」という性別があることだ。
汎とは?

最初に声をかけてくれる「セツ」というキャラクターも汎だ。
グノーシアの世界での「汎」という性別は、現実世界におけるXジェンダーの「無性」と言い換えるのが近いかもしれない。
もう1人「ラキオ」という重要キャラクターも「汎」と設定されている。

本人がゲーム内で明かしているように、ラキオは生まれた体は男性だが「魂」は汎で、汎化処置をその内する、とのことだ。
トランスジェンダー男性である僕はここで親近感を抱いた。
ラキオはトランスジェンダー汎なのだ。
ここで気になることは、ゲーム内での「汎」とは性自認であると同時に、生物学的性別(セックス)でもあるのではないか?ということだ。
現実世界のXジェンダーでも男女の特徴的な体の部分を手術で取り除く人もいれば、手術などはしないという人もいる。
対してグノーシアの世界では「汎」を自称する「ラキオ」の裸を見て「男ではないか」と指摘するシーンがある。
ということは、「汎」という身体的特徴がグノーシアの世界には存在するのではないだろうか?

実際のプレイヤー初期設定の画面での汎性の説明は
汎性は後天的に選べる性であり、無性とも呼ばれ、男女の身体的特徴を排除している場合が多い
グノーシア
とある。
現実世界のインターセックスが先天的な身体的特徴であるのに対して、「汎」は後天的な性自認とするところからXジェンダーの無性に近い。
それと同時に、「男女の身体的特徴を排除している場合が多い」としていることやラキオの汎化の話から、「男女の身体的特徴」がない、というのが汎の身体的特徴とこの世界では考えられていそうだ。
「汎」の恋愛対象は?

「セツ」はゲーム内で男性キャラに「私は汎だから(恋愛的なことは)やめてくれ」と言うシーンがある。
とはいえその男性キャラが本当に苦手という描写があるので「汎だから」というのは一種の避けるための口実のようでもある。
プレイヤーに対してはプレイヤーの性別問わず、親友ないしは恋人かのように親密に接してくる。
一方「ラキオ」は恋愛話を「交配システム」と言ったり「汎だから恋愛はしない」と言ったりしている。
現実世界でも性自認と恋愛対象は全く別の話であり、「性自認」「恋愛対象」の組み合わせは人それぞれである。
グノーシアでも汎という性自認と、誰が恋愛対象か・恋愛はしないかというのは別のようだ。
汎の性表現は?
性別の中には性表現というものがある。
性表現とはファッションやしぐさ、口調などのことを言う。

「セツ」を見てみると、ミディアムロングの髪型でピン止めをしている。一人称は「私」。「~だ」「~だろう」という語尾を使っている。立ち絵のバリエーションを見るに「女っぽい」「男っぽい」と言ったしぐさはなく、「中性的」を意識されているようだ。
このことから「セツ」が汎だと判明するまでは「女の子かな?」と思ってしまう要素が多い。
「セツ」の性表現は中性~女性といったところだろうか。

「ラキオ」を見てみると、服装やヘアメイクは男性・女性というよりも「派手」といった印象なので「中性的」としておこう。一人称は「僕」。とげとげしいながらも、どこか丸尾末広などの70年代耽美系を彷彿とさせる口調。立ち絵のバリエーション的にも「中性的」。
「ラキオ」は「僕」という一人称から「男の子っぽい」という印象がある。
「ラキオ」の性表現は中性(男性要素あり)というところだろう。
グノーシアの汎性は本人の自認であり、性表現に関しても本人の好みが反映している。
「汎」という性表現がグノーシアの世界で決まっている、というわけではないらしい。
これも現実世界と同じところだろう。
もう1つの魅力・人種(?)

グノーシアは未来の宇宙船を舞台にしているので、登場する14人も地球を始めとした色んな星から集まっている。
ストーリーが進むと、キャラクターの性質に出身の星が大きく影響しているのが分かる。
出身の星によって「常識」が違ったり、「人間」ではない見た目のキャラが「人間」として登場しつつ「人間として扱ってくれる…?」とおずおずしていたり、まるで地球の人種の歴史を早回しに圧縮しているような感じだ。
登場時は「何コイツ変なの」と思っても、ストーリーが進むとキャラクターが立体的に深く理解できて、最後には「全員大好き」と思えるのがこの「グノーシア」というゲームの魅力だと思う。
「情報を集めると、鍵が開く」というのがゲームコンセプトのようだが、これは現実世界でも当てはまるし、意識していきたいコンセプトだ。
まとめ

今回はゲーム「グノーシア」に登場する「汎」についてお話してきた。
一昔前だとトランスジェンダーは「変態キャラ」「性的な面白キャラ」でしか物語に登場しなかった。
作品として面白ければ僕は何でもアリだが、やはり一昔前の「変態キャラ」やそれに対するイジリは、ギャグだと分かっていてもけっこう傷をえぐられる。
一方で最近のゲームを始めとした作品では、LGBTq+を1人の人間として描こうというスタイルが多い。
LGBTq+の抱える問題にフォーカスするものもあれば、「LGBTq+」と意識せずに普通の人、普通の恋愛としてLGBTq+以外のキャラクターと同等に扱っているものもある。
グノーシアでは汎キャラを男キャラ・女キャラと同等の扱いをしているのが、さらに良い。
当事者でもコンプレックスを刺激されず楽しめるし、当事者でなくても普通にプレイできる。
僕は人物を油絵で描くが、ミステリアスを探求したくなるのが絵画だとしたら、近くまで行って仲良くなれるのがゲームの最大の特徴なんだろうな、と感じた。