こんにちは、Miyabiだ。

世の中には一定数「生まれた体は女性。男になりたい。恋愛対象は男性」という人がいる。

トランスジェンダーでFTM(生まれた体が女性で、心の自認は男性)の人は、みんな恋愛対象が女性だと思われがちだ。

だが、生まれた体と心の性別が一致している人の中に異性を好きな人もいれば同性を好きな人もいるように、トランスジェンダーにも異性を好きな人と同性を好きな人がいる

「性自認(心の性別)」と「性的指向(恋愛対象)」の組み合わせパターンはたくさんあるってことだね。

ところで、「生まれた体は女性。男になりたい。恋愛対象は男性」という人はみんなFTMのゲイか、と言うと、そうではない可能性もある。

今回は「男になりたい。恋愛対象は男性。こんな自分とは?」と感じている人に向けて、どんな可能性が考えられるか自己分析の助けになるように、お話をしていこう。

FTMでゲイ、とは?

性別と恋愛は別物~トランスジェンダーと恋愛~

僕はトランスジェンダー男性(FTM)なのだが、トランスジェンダーの当事者として実感しているのは「自分の性別と、恋愛対象は全く別の話」ということだ。

恋愛対象の性別によって自分の性別に悩むときは、ここがごっちゃになっている可能性があるんだ。

親に「実は自分はトランスジェンダーで男性だ」とカミングアウトしたとき、「…戸籍の性別を変えたいっていうのは、結婚したいってこと?」と質問をされた。

親は僕のことを理解してくれようと、分からないことを1つ1つ丁寧に質問してくれたので悪気はないのは分かっている。

僕らトランスジェンダーが戸籍の性別を変えたいというのは、「自分は男/女なのに、戸籍や免許証や保険証、間違ってるよ」ということなのだ。

こんなときに、いちいち「おや?」と引っかかったり「実は…」と訂正したりするのは、けっこう面倒な作業

もっと真面目に話すと、周りの人たちから「あなたはこう!」と意図しないアイデンティティを押し付けられて自分を殺されている感覚から解放されたい、その一心なのだ。

だから「異性の恋人がいる結婚予定のトランスジェンダー」だけが性別を変える、わけではなく、「同性の恋人がいる」「恋人いない」トランスジェンダーも含めて「自分の性別のアイデンティティを否定されたくない」と感じたときに性別変更を検討する、という感じだと考えると分かりやすい。

これがトランスジェンダーや性同一性障害が性別変更をする理由だ。
「性別」のフィールドには「恋愛」は関係ないんだね。

さて、ここで「恋愛」をプラスして見てみよう。

日本人という「国籍」と画家という「職業」がセットではないように、「自分の性別」と「恋愛対象」もセットではない。

そして「日本人で画家」というセットがたくさんある組み合わせの中に存在するように、「FTMでゲイ」というセットもたくさんある組み合わせの中に存在するのだ。

男性が好きなら女性のままで良いのでは?

男性と恋愛するなら女性のままの方が生きやすい、という意見もある。

FTMも生まれた体が女性なら、性別を変えずに好きな人と恋愛すれば良い、ということだ。

確かに、LGBTq+にまだ偏見のある社会では、その方が差別主義者にも祝福されやすくなる。

では何故同性を好きなトランスジェンダーは、自分の性別を貫いて同性と恋愛するのだろう?

上でも言ったように、トランスジェンダーはそもそも周りの人や免許などの証明書に自分の存在を無意識に否定され続けている

人間誰しも、自分の意見を毎回「あなたは間違っている」と言われ続けると、「自分は間違った人間だ、意見を言っても仕方がない」と主張を止めてしまう

これはつらいことだ。

1人の人間と認めてもらえていない状態であり、恋愛とか仕事とか以前の話なのだ。

なので、トランスジェンダーの人で「性別を変更したい」という考えがあるのなら、恋愛対象が何であれ、尊重する必要がある。

「性別」と「恋愛対象」は別なので、どちらか一方のためにもう一方を捻じ曲げる必要はないのだ。

「男になりたい」とは?

恋愛対象になる人がどんな人かは、好きになって初めて分かるものだ。

逆を言うと、自覚しやすい面でもある、ということだ。

ではここからは自覚をしにくい「自分の性別は?」の面に注目をしてみよう。

本当に「男になりたい」のか、それとも他の理由があるのだろうか?

「男になりたい」の「男」の定義

恋愛対象に関しては「男が好き」「男だったら恋愛対象ではない」「好きになった人が恋愛対象」というように、自分ではどうにもできないことなので今回は「男になりたい」の方にフォーカスしていこうと思う。

まず「男になりたい」の「男」の定義が実は曖昧だ、という問題がある。

トランスジェンダー男性の場合だと、「自分は男なのに周りは女だと思ってる…。周りの人の認識を男にするために体を男にしたい」という思考回路となる。

つまり、自分では既に男性なのだ。(自覚が遅れることもある。トランスジェンダーについてはこちらのリンク先の記事を見ていただきたい)

一方で「男になりたい」にはこれ以外の思考もある。

ここからはトランスジェンダーや性同一性障害以外の可能性を探っていくよ。

1,女性らしいファッションが嫌

体も心も女性だけど、スカートや化粧、ロングヘアーなど「女性ならば」といわれるファッションをするのが嫌で仕方がない」いう考えがある。

中性的なユニセックス・ファッションをする人もいれば、完全に男性ものの服装をする人もいる。

これはトランスジェンダー男性なのだろうか?

もし僕がこの相談を受けたとしたら「トランスジェンダーではなく、クロスドレッサーとも考えられないか?」と言うだろう。

何故ならこの場合、心の性別(性自認)が体の性別と一致して、女性と言っているからだ。

性別には4種類あって、「体の性別」「心の性別」「恋愛対象」「表現」とある。

その中で「表現」は性表現と言って、ファッション・ヘアスタイル・しぐさ・言葉遣いなどの表現部門で自分をどういう性別に見せたいか、という観点だ。

「心の性別に性表現を合わせる」という人も多いが、「心の性別と性表現は全く別」として生きる人もいる。

また、体の性別と心の性別が一致していても、ファッションだけでなく体の男女の特徴的な部分が嫌、と考える人もいる。

女性だと「声が高すぎるなぁ」「胸の大きさが…」などが悩みとして多いよ。

これはトランスジェンダーと混同しやすいので、慎重にあなたの心の性別を整理してみよう。

2,性的に見られるのが嫌

周りの人に性的に体を見られるのが嫌だ。

そう思う人も少なくない。

近くで繰り広げられる下ネタや猥談が嫌だったり、体が女性なら胸を見られるのが耐えられなかったりもする。

セクハラは問題だが、そうではないものでもとても嫌。

いっそのこと男になりたい。

こういう事情で「男になりたい」と考えてしまうことも多いだろう。

その気持ちは分からなくはない。

が、それで「よし、自分はトランスジェンダーだ!」となるのは待ってほしい。

もしそれでホルモン治療や手術をしてしまうと、声が低くなる・胸が無くなる・子宮がなくなるなど、性的以前に生物的に「女性」ではなくなる

これはあなたのアイデンティティをつぶしてしまっていないだろうか

自分の性別が嫌な原因が自身の問題というより周りの問題の場合、「トランスジェンダー」と決定するのは少し待って…!

一番大事なのは、あなたの認識するアイデンティティだ。

その上で、服装を変えてみるなり、周りの人に「下ネタとか本当に嫌」と伝えてみたり、自分に合った行動をしていこう。

また、他の可能性としてアセクシュアルやノンセクシュアルといった「性的なこと・話が苦手・何が良いのか分からない」というセクシュアリティも挙げられる。

3,BLが好きで感情移入している

自分のセクシュアリティを考えるとき、BL作品をどう受け取るかで判断する人も多いので、これについても見てみよう。

漫画や映画などに感情移入をすると、自分と全く違っていても「その人になったような感じ」がする。

昔の任侠映画では「映画館から出てくる人、みんな高倉健の歩き方になっている」というエピソードがある。それほど、良い作品には観客に影響を与える力がある

BLも同じだろう。

BLは少女漫画であることが多く、ターゲットを女性メインに設定されている。

つまり、キャラクターが男性であっても女性が感情移入しやすいように作られているのだ。

これで「自分は男になりたいんだ」と判断してしまう人も多い。

僕も「こんな幸せな恋愛ができる主人公になりたい」とBL読んで思った思い出がある。BLを読んで「男になりたい」と思った女性も、根本はこの思いだろう。

では、どう見分ければ良いのだろう?

トランスジェンダーかどうかは自分史を書くなど、あなた自身の経験を元に判断する。

なのでフィクションであるBLに感情移入できるかどうかは、実はあなたの性別や恋愛対象とはあまり関係がないのだ。

良い作品に出会えたということで、作り手のためにも作品を宣伝しよう。

「そもそも女性・男性と思わない」という性自認

自分のことを女性と思わない、ということから「自分は男性?」と感じる人もいる。

だがここで「男性、でもない」という感じがしたら、無理に「男性です」と言う必要はない

Xジェンダーノンバイナリーという性別があり、女性や男性という性別にとらわれない・どちらでもない・どちらでもあるなどなどの考え方をする人が含まれる。

トランスジェンダーの1つであり、僕も「男性」とハッキリ思うまでは「もしかしたらXジェンダーの可能性もある」と熟考した。

また、「自分がどの性自認かまだはっきり分からないな」「考え中…」という人は、クエスチョニングという意思表示もできる。

「?(クエスチョン)」から来ている言葉で皆さんお察しの通り、「考え中です」「模索中です」を表すセクシュアリティだ。

自分の性別がしっくり来ていないからと言って、「逆の性別かも」「逆の性別にならなきゃ」と焦って決定しなくてもいいってことだね。

まとめ

今回はFTMでゲイの人、「男になりたい」とは?ということをお話した。

追加情報だが、FTMでホルモン治療をしていると生理が止まるので、ゲイだと避妊をせずに男性と性交をしてしまって意図しない妊娠をしてしまうというトラブルが起きやすい。

「FTMでゲイ」はマイノリティの中のマイノリティなので、現状は教育が全くされない領域になっている。

いわゆる「放置」だ。

特に日本ではトランスジェンダーについて語られることがゲイやレズビアンに比べて少ない。

FTMも避妊は必要だ。気をつけよう。

また、「男になりたい」と感じている時点だと、トランスジェンダーなのかそれ以外なのか自分で自分が分からない、混乱状態である人も少なくないだろう。

自分のことが分からないのはすごく不安だ。

同時に、「自分」というのは自分でも分かりにくいものでもある。

なので、ぜひ慎重に、丁寧に自己分析をする時間をとっていただきたい

新しい油絵に取り掛かる前、絵を描かずに「自分は今、どう感じているだろう?どういうふうに現在を考えているだろう?」と思考して、文字で考えをA4コピー用紙に書き出す時間を1日とる。

そうすると、「何が伝えたいの、この絵?」「こんなはずじゃなかった」ということは起こりにくくなるのだ。

セクシュアリティの自己分析もこれと同じだと思っている。

もしこの記事で「トランスジェンダーかも」「性同一性障害かも?」と感じた方はこちらの記事も参考にしていただきたい。

他にも「LGBTq+の歴史やアートを知りたい」「どんな変遷を辿ってきたの?」という方にも多く記事を公開しているので、こちらもぜひ。