
こんにちは、Miyabiだ。
僕はLGBTq+のT、トランスジェンダーの男性で、物心ついた頃から性別に違和感があった。現在ではGID(性同一性障害)の診断書をもらってホルモン治療をしている。
性別に違和感がある人の中には「自分の性別に違和感があるけど、逆の性別になりたいかは分からない」「この違和感は性別に対するものなのか、他に要因があるのか分からない」など、違和感はあるけど正体が分からないという人も多いのではないだろうか。
かく言う僕も物心ついた頃から「これは性別の違和感だ」とお医者さんに診断書をもらいに行くまで、20年くらいの時間を必要とした。
今回は性別に違和感があるかも…と感じたときどうすればいいか、どう自分と向き合えばいいかについてお話していこう。
目次
性別に違和感がある、かもしれない
違和感を感じたキッカケは千差万別

「自分の性別に違和感があるかもしれない」と考え始めるキッカケは人それぞれだ。
昔なら「男の子はミニカー、モデルガン、怪獣の人形」「女の子はおままごと、人形遊び、おもちゃの化粧品」のように、幼稚園などで性別に応じて与えられる遊びによって「あれ?」と感じる人もいただろう。
また、もう少し成長したときの恋愛話で恋愛対象の違いから「ちょっと待って」と思うこともある。
一番分かりやすいのは、第二次性徴の時期に起こる体の変化に対する嫌悪感だろう。中学生前後で起こる第二次性徴は、生まれた体が男性の人は男性の、生まれた体が女性の人は女性の身体的特徴が強調され始める。
スカートが嫌、スカートを履きたいというキッカケもある。
僕はおもちゃは男女の区別なくミニカーも怪獣も赤ちゃん人形も与えられて、面白いもので遊んでいたし、スカートも可愛いものなら履いて楽しかった。
ただ、学校で「女子はこっちに並んで」と言われたり、事あるごとに記入しなければならない「男・女」の性別欄で「…自分は女子じゃないけど皆自分を女子だと思ってる」と敵国に侵入中のスパイのような緊張感に襲われた。
「自分は将来漫画やテレビで見るようなスマートなイケメンになる」と思っていたのが、第二次性徴での体の変化がそれと全然違う女性らしいものだったのにかなり戸惑った。
このような違和感があったときに、自分の気持ちに従って外見を自分の心の性別のようにする人もいれば、僕のように周りからの認識に合わせる人もいる。
違和感の原因は、本当に性別?

だがミニカー好きな女の子もいれば人形遊びの好きな男の子もいるように、「性別」というより「個性」が違和感の原因だったり、恋愛話では「自分の性別」ではなく「恋愛対象の性別」が周りと違う、というケースもある。第二次性徴での嫌悪感も「性別」よりも「美醜」「他の人からの性的な目線」から生じたりすることもある。
「これじゃ違和感の原因が分からない!」とお思いの方もいるだろう。
どうすれば違和感の原因を突き止められるのだろう?
僕がやった方法は、ひたすら「何で?」と思ったポイントを整理することだ。

例えば「女子はこっちに並んで~男子はこっち」という先生の指示で違和感を感じた場合、考えられる原因は
- 自分の性別と周りから認識されている性別が違う
- 男女を分ける意味が分からない
- そこに並びたくない
- この先生の言う事は聞きたくない
などがあるだろう。一言に「違和感」といっても、原因の可能性はたくさんある。
その中であなたが「…?」と引っかかりを覚えたポイントを丁寧に洗い出していくのだ。
1個の事例だけだと、「自分の性別も男女別ける理由も違和感ポイントだし、この先生の言う事だけは聞きたくない!」と複合的だったりすることもある。
なので「もしかして性別の違和感?」と感じた出来事を全部調査するとさらに精度が上がるだろう。

「スカート履くの好きだけど、「女の子だもんね」と言われると違和感がある」
「恋愛対象は男性だけど、女の子と認識されたくない」
「怪獣大好きだけど「男の子だね~」と言われるのは違う。女性でも好きな人はいるし、ていうか自分も男じゃない」
のように事例が集まってくると、自分の価値観、自分が周りからどう認識されたいかが整理できる。
それはジェンダー?セクシュアリティ?

「性別」といっても「ジェンダー」と「セクシュアリティ」の違いがある。
女の子がモデルガンで遊んでいるときに「女の子なのに…」と非難されたとして、
- 「女の子がモデルガンが好きなのはいけない?何で?」というのはジェンダー問題
- 「自分は女の子じゃないのにな…」というのはセクシュアリティ問題
というように分かれてくる。
これを混同してしまうと、「自分はトランスジェンダーだ、ホルモン治療を始めよう!」とした結果、実は違和感ポイントはジェンダーだけだった、セクシュアリティ問題は感じてなかった、となる危険性がある。
ホルモン治療は中断すれば元に戻る変化もあれば、永遠に戻らない変化もある。
僕はジェンダーとともにセクシュアリティも引っかかりポイントだった。なのでホルモン治療をして外見や声を男性化して満足できたし、人のことも男女の枠ではなく「個人」の個性をみるようにしようと考えている。
「性別に違和感があるな」と感じたら、このジェンダーとセクシュアリティの違いにも注目して丁寧に分析をしてみよう。
男女のどっち?分からない

このように自己分析をしてきた結果、「生まれた体の性別と心の性別が一致しない」と分かるかもしれない。
ここで「自分は男性だ」「自分は女性だ」とハッキリ性別を認識できる人もいれば「男女どっちもある」「男女の中間」「男女とかじゃない」「分からない」などなど、「曖昧」な状態の人もいるだろう。
それは自然なことだ。
「曖昧」というけれど、実際「男・女」と白黒2択よりも、性別にはバロメーターのように中間ゾーンがあるし、そもそも枠組みが不要な人もいる。
「自分の性別に違和感がある」。でもホルモン治療をして体と逆の性別に特徴を近づけるのも違うな…
トランスジェンダーといっても治療をして外見を自認の性に近づける必要があるわけではない。

治療は体に変化をもたらすものだ。そして体の主はあなただ。
男女のどちらかを自認してもいいし、Xジェンダーやノンバイナリーを自認してもいい。「まだ分からない…!」と感じるなら「分からない・不明・クエスチョニング」という名称がある。
焦る必要はない。
精神衛生を保とう

性別に違和感があると感じる状態は、なかなか人に相談できない。からかわれたり迫害されたりする恐れもあるし、自分で考えがまとまってない状態だと相談というのもしづらい。
信用できる人に相談しても、その人が必ずしも解決策をくれるわけでもない。
最終的に自分の心を対話して答えを導き出す。
こうなると、メンタルを病んでしまったり鬱状態になってしまうことが多くなる。LGBTq+が二次的に鬱病になりやすいのはこういった背景がある。
なので精神衛生を保つことが大事になる。

具体的には
- 自分が何に悩んでいるかを、大事な友人からの相談に乗るように、受け止めてアドバイスを考える
- 自分が傷ついているなら、大事な友人を抱きしめて安心させるように、「傷ついている状態」を拒絶せず受け入れる
- 1つ目で考えた「大事な友人にするようなアドバイス」を1つずつ実行してみる
というようなことをすると、「違和感を感じている自分」を責めすぎることをせずに済む。
「セルフコンパッション」というやり方の1つだ。アマゾンで本がたくさん出ている。おすすめだ。
僕たちは自分が一番生きる生き方をすることを目指す。
他人から否定されても、自分を否定して押しつぶすことだけは避けたい。
そしてゆくゆくは、否定する他人ではなく、信頼できる人と友人になれれば良いのではないだろうか。
まとめ

GID(性同一性障害、性別不合)の診断書をもらうプロセスとして「自分史」を書く、というのがある。
自分の性別に違和感を感じた瞬間を年表のようにまとめてお医者さんに見せるというやり方だ。
今回のお話はこの整理の作業を詳しく説明して、すぐにお医者さんにかかれない、「違和感がある」くらいの段階だから自分でまずは整理したい、という人向けに記事を作ってみた。
結果的に「生まれた体の性別でオーケー」だったとしても、この作業はあなたの価値観をハッキリさせることができるものでもある。
今3つの油絵を同時進行して制作している。
このブログは昔の僕のようにセクシュアリティで悩んでいる人の助けになればいいな、と思って書いているものだが、同時に僕の考えを整理したり新しいことを勉強する機会でもあり、絵の制作にも役立っていて感謝している。
今日はこの辺で。