
こんにちは、Miyabiだ。
僕はトランスジェンダーの男性で、ホルモン注射を始めて1年が過ぎた。
前回の記事で「男性ホルモン治療とは?」「女性ホルモンはどうなる?」についてお話をした。
今回は「男性ホルモン注射を打ち始めたときに体に出る変化」について、僕の実体験を交えつつお話していきたい。
「自分はトランスジェンダーかもしれない」「これからホルモン治療をしたい」と思っているFTM(生まれた体は女性だが心の自認は男性)の方に参考になればと思う。
目次
男性ホルモン注射による変化
FTMが男性ホルモン注射を継続して打っていると、体に良くも悪くも変化が出てくる。
同じ変化でも人によって「嬉しい!」「こんなはずじゃなかった…」と受け取り方が変わってくる。一度起こってしまったら治療を中断しても元に戻らない変化もあるので、治療を始めるかどうかの参考にしていただきたい。
生理が止まる

打ち始めて1カ月~半年くらいで月経が停止する。
注射1本目で生理が止まるのはまれで、たいていは継続して変化が訪れる。僕の場合は半年くらいかかった。
人によっては1年継続しても止まらず、性別適合手術で子宮摘出して始めて生理が止まった(子宮を取るのだもの)という人もいる。
男性ホルモン注射は卵巣の働きを弱めたり停止させたりする。だが、FTMのゲイの方が妊娠するケースがあるように、男性ホルモン注射をして生理が止まったとしても避妊ができているというわけではないことに注意したい。
声が低くなる

僕の場合、ホルモン治療を始めて最初の変化は声が低くなることだった。
生まれた体が男性の人の中学時代を思い出してほしい。あの声変わりと同じ変化をFTMも辿る。
- 風邪をひいたかのように、話すときに喉がガサつく。周りの人に「風邪ひいた?」と聞かれる可能性が
- 声が出しにくくなる。今までの発声で話そうとすると声がひっくり返る。
- 1年くらい経つと、男性の声になって落ち着く。このくらいになると発声の仕方もつかめてきて声がひっくり返ることも少なくなる。
この変化は永久変化で、一度起こると治療を中断しても元に戻らない。また、どの程度低くなるかは個人差がある。これは生まれた体が男性の人と同じことだと考えると良いかもしれない。
僕のホルモン注射による声変わりはどうかというと、カラオケで「炉心融解」などのボーカロイドの高音ソングが難なく出ていた声だったのが、米津玄師の「lemon」のAメロが原曲キーで出るくらいにまで低くなった。
生まれた体が男性の人の声と変わりはない。
だいたい半年~2年で起こる人が多い。
ヒゲが生える、体毛が濃くなる

これも声変わりと同じで、生まれた体が男性の人の中学時代に起こる変化と同じだ。
口周りのヒゲだったり、脚や腕の毛、人によって胸毛などが生えたり濃くなったりする。
「自分はどれくらい体毛が生えるのだろう?」と思う人も多いだろう。
この変化は個人差がかなりあって、基本的に父親や兄弟など、自分と血のつながった男性家族を参考にすると分かりやすい。
つるつるの人もいれば、一気に濃くなる人もいる。
ニキビができる

基本的に中学時代に起こる変化を追体験しているような感じなので、男性ホルモンによってニキビもできやすい。
顔や背中にできる人が多いとのこと。僕も半年くらいで一気に増えてしまった。
ホルモン治療によるとはいえニキビはニキビなので、普通のニキビの治療薬で治すことができる。皮膚科へ行こう。
クリトリスが肥大化する
継続していると全ての人が大きくなるが、これも個人差が大きい。
なかなか男性器のように、とはならないが、人によっては性交時に挿入ができるくらいに大きくなる人もいるようだ。
とりあえずレディースの股の浅いジーパンやスキニーを履いている人は、メンズのズボンを用意しておくと擦れて痛くなったりしないので安心だ。
性欲が出る
治療を始めるとほとんどの人が性欲を感じる。
男女ともに性欲のある人はいるが、ホルモン治療を始めて「男性と女性の性欲の違い」がはっきり分かった気がする…というくらい、性欲が強い弱いに関わらず生物学的に男性のものになる。
筋肉が付きやすくなる

筋トレなどをしたときに筋肉がつきやすくなる。
男性ホルモン注射をしたからといって自然と筋肉がつく、というわけではないので注意したい。
男性ホルモンを打つと食欲も出てくるし太りやすくもある。筋肉が付きやすい性質を生かして筋トレを始めると良いかもしれない。
髪が禿げる
男性の禿げは男性ホルモンからくる、とよく聞く。
FTMの男性ホルモン治療も同じで、髪の毛が薄くなったり、禿げたりする人もいる。
これも個人差が大きく遺伝によるものなので、自分と血のつながった男性家族を見てみるとあなたの髪の毛のことも予想ができるだろう。
体つきがゴツゴツしてくる
女性ホルモンが丸みのある体型を作り出す。
男性ホルモン治療を始めると女性ホルモンの生成が微弱になるので、体つきがゴツゴツしてくる人が多い。
手の形だったり、腕の血管の浮き具合だったりが分かりやすい変化かもしれない。
精神的な変化

男性ホルモン剤は効果が打ったときはあるが、2~3週間で切れてくる。
この効果が切れてきたときに体内のホルモンバランスが不安定になり、イライラしてくる人もいる。これは治療を始めた頃に多いことで、たいていは継続すると安定してくる。
また、ホルモン治療の直接的な影響ではないが、治療によって声や体が男性になっていくことでFTMの人の自己矛盾が解消され、自己肯定感が生まれて生きやすくなった人も多い。
僕も声が低くなったり生理が止まったりして「本来の体になっている…!」と実感でき、自分らしく生きよう、という気力が起こった。
実際の変化の体験談
こういうのは個人差が大きいものの、実際の変化を体験を聞きまくるのもホルモン治療に踏み切る前に重要だと思う。
「Aさんではこうだったけど、Bさんはこんな変化があったのか。自分がやったらAさん的かBさん的か分からないけど、どっちも可能性があるんだな」
と、比較しながら色々な変化の度合いをシミュレーションできるからだ。
ネットにトランスジェンダーの人の体験記やブログなどがたくさんあるので、ぜひ探してみてほしい。
↓(追記)僕もホルモン治療2年目の節目に、変化の具合を記録してみた。参考までにどうぞ↓
まとめ

あなたが目指す「理想の自分像」は他の人の「理想の自分像」と違うかもしれない。
それは同じFTM同士でも同じで、ある人は声が低くなって嬉しくても、別の人は声は変わらなくてもいいと思っていたりする。トランスジェンダーだからといって必ずしもホルモン治療をしなければならない、ということでは決してない。
男性ホルモンによる変化は個人差も大きいので、あなたの理想像や血縁の男性家族を参考に「ホルモン治療をするか」「しないか」を選択すると良いのではないだろうか。