
こんにちは、Miyabiだ。
「プラトニック・ラブ」という語を聞いたことはあるだろうか?
直訳で「プラトン(古代の哲人)のような愛」、「肉体関係を持たない、精神的な恋愛」のことをいう。
この恋愛観については男女ともに性別関係なく賛否両論ある。
ところで何故、「肉体関係を持たない愛」と「古代ギリシャの哲学者プラトン」が関係あるのか、不思議に思ったことはないだろうか。
今回はこの「プラトニック・ラブ」の語ができた歴史についてお話しよう。
目次
プラトニック・ラブとギリシャ的愛
プラトンは記録者、主役は師・ソクラテス

「プラトニック」とは「プラトンのような」という意味だが、肉体関係を持たない愛を貫いたのはプラトンの師匠である哲学者・ソクラテスだった。
プラトンは師・ソクラテスの言葉を書き遺した弟子なのだ。
そしてソクラテスが「プラトニック・ラブ」を貫いた相手は、ある美少年だった。
少年愛を内包する、本来のプラトニック・ラブ
古代ギリシャには年長者が年少者(いづれも男性)を親から引き取って武芸や勉強、内面的なことなど教育するシステムがあった。その延長線上で年長者と年少者の恋愛が古代ギリシャにはあったのだ。
この少年愛を「ギリシャ的愛」ともいう。
この価値観が時代背景にあった。
傲慢な美少年・アルキビアデス

哲学者ソクラテスは、良い家柄で才能もあり、なおかつ優れた美貌をもつ少年・アルキビアデスの師匠となる。
このアルキビアデス、自分の才覚や美貌を十二分に自覚をしているタイプの美少年でかなり傲慢な性格をしていたらしい。自分よりどんくさい人を完璧に見下していた。
その一方で自分よりも優れている偉大な哲学者・ソクラテスに対しては情熱と尊敬の念を持っていて、ソクラテスが他の美しい人に少しでも目を向けようものなら激しく嫉妬した。
政治家・軍事指導者になった大人になってからの彼の評判をみると、徳も悪徳も誰よりも勝っていて男女とも恋人が絶えなかったり、弁舌の才もあり民衆扇動や議論に優れていたり、才能も魅力も本物だと分かる。
ソクラテスはそんな自信満々な彼に哲学的興味があった。
アルキビアデスもまた、そんな自分を観察していたソクラテスに関心があった。
それから2人の会話が始まるのだった。
プラトンの記録した2人の会話
美少年の野心と哲学者の指導

アルキビアデスは政治家になりたいという野心を持っていた。先ほど言ったように、自分の才覚を自覚しているタイプなので自信満々な態度だ。
それに興味を持ったソクラテスはこの少年に話しかけ、「正・不正」や「無知の知」などについてアルキビアデスと問答をする。
その問答の結果、傲慢な美少年・アルキビアデスはソクラテスを師匠として認め、「今日からあなたのことを追い掛け回す」と宣言した。
「肉体的な愛」と「精神的な愛」
この問答のなかでソクラテスは「肉体的な愛」と「精神的な愛」についても話している。
美少年であるアルキビアデスは非常にモテた。だが「彼らは「肉体」を愛しているのであり、肉体の花盛りが過ぎれば離れ去っていく」とソクラテスは言う。
そして「真にアルキビアデスを愛するというのは「魂」を愛することであり、「魂」を愛する者は向上している限りは離れることはない」「アルキビアデスの魂を愛しているのはソクラテスただ1人だ」とまで言った。
これこそが「プラトニック・ラブ」の原型、由来なのだ。
アルキビアデスの誘惑と屈しない師匠

哲学の問答というよりも口説き文句に聞こえてしまうソクラテスの言葉。
「どうしたら魂を磨けるのか?」とアルキビアデスは尋ね、「徳を身に着けることだ」と回答をもらい、ここから師弟関係がスタートする。
アルキビアデスは老人師匠であるソクラテスに激しい愛情を注いだ。
全く手を出してこないソクラテスに我慢ならなくなり、ある日、説得の末に家に泊まらせて一緒に寝るなど何度も何度も美少年は誘惑をしたのだ。
だが「魂の愛」を説いた哲学者は美少年の誘惑に一切乗らなかった。
確かにソクラテスはアルキビアデスを愛していた。だが「肉体関係のある愛」ではなく「精神的な愛」を求めていたのだ。
まとめ

現代でも本屋さんにいけばプラトンが記録したソクラテスの言葉を見ることができる。
「肉体関係を持たない愛」は「プラトンの」というよりも「ソクラテスの」愛の価値観だった。そしてそれは美少年・アルキビアデスによって立証されて、プラトンによって後世まで伝えられたのだった。