
僕はMiyabi Starr という名で画家をやっている。
それと同時にLGBTq+のT、トランスジェンダーの男性(FTMという)であり、現在は男性化の治療をしている真っ最中だ。
「何で男性になりたいの?」とよく聞かれるが、僕は物心ついたときから自分の生まれた性別に違和感を感じていた。自分では「僕は男の子!」と思っているのに、周りからは女の子と認識されているのが不思議でたまらなかった。
特に幼稚園時代なんて大人の言っていることが絶対正しい世界だから、よけい誰にも相談できずに悩んでいたのだ。
誤情報に流される

高校に入る当たりでスマホを買ってもらった僕は、初めてネットで自分の性別の違和感について検索した。
「LGBTq+」とか「トランスジェンダー」なんて言葉は知らなかったから検索は「女だけど男」みたいに、頑張ってはいたけど今見るとずさんだった。
すると結果は
「ブスでモテないオタク女が「男になりたい」とか言い出す」
こんな検索結果が山ほど出てきたのだ。
LGBTq+やトランスジェンダーの知識があれば「これは自分には関係ないな」「自分とは論点がズレてるな」と判断できたのだが、外見気にする思春期な上に知識のなかった高校時代の僕は「確かに自分はブスでモテモテじゃないぞ…」と信じてしまったのだった。
ここだけを見ると悲しすぎるが、ここからの僕はオシャレに気を配り、女の子として、じゃっかんではあるがモテを手にした(笑)。
ズレに気づく

だがここで1つ、壁にぶち当たった。
「女の子を演じている…!」
そう、男性の役者が女性役を演じるものの、全くお芝居が終わらない。そんな感覚が毎日襲ってきたのだ。
「男性の役者」であれば、いつかは舞台は終幕する。だけど僕は日常が女性であって、日常は生きている限り終わらない。詰んだ。本当の自分を隠し続ける精神力は並大抵ではなく、このとき鬱症状を引き起こしている。
ここでようやく、「ブスでモテないから男性になりたくなる」説は間違いなのではないか、そう気が付いた。
この気づきから、僕のメンタルは回復の兆しを見せ始めた。
トランスジェンダー、FTMを知る

大学を卒業する、そんな時期に僕はもう一度ネットで検索をすることにした。
「体は女性 心は男性」
ネットの情報は新しく、正しいものが多くなっていた。
僕はLGBTq+、トランスジェンダー、FTM(体は女性だが男性の人)を知った。からかいでも傷のなめ合いでもなく「この世の中に当たり前にいる人の種類」として情報があったのだ。
また、FTMの情報を発信している先輩のトランスジェンダーの方にも直接会ってお話を聞く事もできた。その方とお話をすると、幼少期からずっとあった違和感のごちゃごちゃが全てパズルのようにピースがはまったのである。
自分は自分として生きていい、そう前向きになれた。
同じトランスジェンダーでも自分のなりたい自分像によって治療したりしなかったり色んな人がいる。それを知った上で、僕はFTMの治療を始めることにした。
なりたい自分になるには知識が必要

幼稚園児に「将来の夢は?」ときくと、「幼稚園の先生!」「〇〇(アニメのキャラクター)!」と答える子が多い。
それは幼稚園の先生やアニメのキャラクターが身近にいる理想の人だからだ。
裏を返せば、それ以外知らないから答えようがない、ということになる。
これは大人になっても同じことだろう。世の中にどんなに素敵な人がいようと、素晴らしい仕事があろうと、知らなければそれになれるどころか理想にすらできない。
「今の自分のままは嫌だ…」「でもそれがどういうことか分からない」
そういう人は大勢いるだろう。僕みたいにLGBTq+だけどその知識がなくて問題が解決しない人、将来の自分、自分の好きな事とは?などなど。
僕はLGBTq+を知ってからLGBTq+の基礎知識はもちろん、LGBTq+の歴史、LGBTq+の登場人物が出てくる作品、今現在活躍しているLGBTq+の人たちを研究している。
そして、それを糧に絵を描いている。
自分のアイデンティティについての正しい情報、多様な情報を手に入れて、それを自己表現に結び付けたのだ。
もう自分の存在を否定しない。
だから僕はLGBTq+として絵を描いていく。