
「あの人はLGBTq+なのではないか?」
誰かに対してそう思った事はあるだろうか?
「見た目からしてレズビアン・ゲイ・トランスジェンダーなのでは?」
僕はトランスジェンダーで普段は男性っぽいかっこうをしている。だが、現時点(2021年1月)で治療が完了していないのでまだまだ見た目に女性っぽいところがある感じだ。
また、よく芸能人や有名人を指して「LGBTq+では?」と言う人がいるが、外見からLGBTq+を見分けることは可能なのだろうか?
目次
LGBTq+を見分ける?
LGBの場合

LGBTq+のLGBとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシャルのことだ。
これらの名称は本人の性別の自認を問わず、恋愛指向だけを論点にしたものだ。
だから異性愛者(男性が女性を、女性が男性を好きという恋愛指向)と同じで、本人が誰を・どのタイプを好きかを、どの程度オープンにしているかでしか見分けられない。
恋愛対象うんぬんを抜きにして、一度、修学旅行の夜のような恋愛トークを思い出してほしい。
オープンにしているなら「〇〇のこと好きなんだよね」と言うだろうし、隠す人なら隠し通す。中には周りの友人に合わせて好きなタイプをごまかしたりするケースもあるだろう。
見分けるというよりも、「知る」というほうがしっくりくる。
そして、「〇〇のこと好きなんだろうな」と普段の素振りで分かったとしても、「ボーズ頭だからロングヘアの人が好きなはず!」ということは無い。
服装や髪形、喋り方などからLGBを見分けることはできないのだ。

また、恋愛トーク中「まだ好きな人がいなくて…」という人もいただろう。
まだ好きな人がいない=これから誰を・どんな人を好きになるか分からないといったように、本人でも自分が恋愛でどの指向を持っているか把握していないケースもある。
この場合、見分けるも知るもなく、次に恋愛するまでは不明ということだ。
昔であればLGBとトランスジェンダーがごっちゃになって「ゲイは女性っぽい」「レズビアンは男性っぽい」といった誤った認識があった。
だが、ゲイは「男性という自認で」男性を恋愛対象にみるし、レズビアンは「女性という自認のもと」女性を恋愛対象とする。
つまり、本人の性格やファッションセンスは関係がないのである。本人の性格やファッションセンス、趣味、仕事などは別の次元で展開しているものと考えて良い。
トランスジェンダーの場合

トランスジェンダーは生まれた体の性別と別の性を自認している人のことをいう。
例えば僕の場合、生まれた体の性別は女性だが、物心ついた頃には「自分は男の子だ」という認識があった。
こう聞くと「じゃあ、女の子なのに男の子の服装をしていたり、男の子なのに女の子のかっこうをしている人がトランスジェンダーか!」と思う人もいるかもしれない。
だが少し待ってほしい。
僕は周囲にカミングアウトする以前、かなり女の子っぽいかっこうをしていた。
理由はさまざまあるが、周りの「常識」の枠に収まろうとしていたのが1つ、「トランスジェンダー」という言葉を知らなかったことで自分に自信を持てなかったのが1つだ。
このように、「自分」をへし折って窮屈な思いで自分のマイノリティを隠そうとする人、あるいは自分がトランスジェンダーだと分からずモヤモヤをかかえている人も多い。
また、女の子が男っぽいかっこうをしていても、それがトランスジェンダーで性別の自認に基づくものなのか、ただオシャレを楽しんでいる女の子なのかは分からない。オシャレに無頓着で一番楽なかっこうをしている女の子かもしれない。
男の子が女の子のかっこうや化粧をしていても、トランスジェンダーだからなのか、自分をより良い見た目にするためか、気分転換や着ぐるみ効果としての女装かは分からない。

また、性別適合手術まで終えた人は、かなり見た目が自分の性別と近づいているので見分けはつきづらい。(骨格は変わらないので、美術解剖学を知っていれば、頭蓋骨や骨盤で元の性別が分かる可能性はある)
トランスジェンダーではない人でも、線の細い男性やたくましい女性もたくさんいる。
「今までは自分の生まれた体の性別でやってきたけど、トランスジェンダーだとカミングアウトして、自分の自認する性で生きていく!」と方向転換したのを目の当たりにすれば、外見で分かることもあるだろう。
だが、「従来の男性像・女性像」と違う=トランスジェンダーという考えは押し付けになってしまう。
トランスジェンダーであろうとなかろうと、その人が自認する性別を尊重する姿勢でいることが、その人の存在を肯定することに繋がるだろう。
LGBTq+じゃないの?気になる!
聞いてみてもいい?

見分けられる方法が完全にはないというのは分かった。
でも、あの人は言動からしてLGBTq+じゃないのかな?気になる…!
こういう場合、どうすればいいのだろう?
「もしかしてLGBTq+?」
と質問してみるのも手かもしれない。
だが、質問された方が必ずしも正直に答えてくれるかどうかは分からない。
たとえ本当にLGBTq+だったとしても「この人はLGBTq+を差別しないかな?からかわずに聞いてくれるのかな?皆に悪いように言い振らしたりしないかな?自分から離れていかないかな?」など、かなり心配事が多いからだ。
あなたを信頼できても、周りに信頼できない人、関係が浅い人などがいた場合もリスクを避けるためごまかすこともあるだろう。
質問するよりも、相手と信頼関係を築いて、LGBTq+関連の話題でも普通のことだという立場でいたならば、向こうからカミングアウトしてくれるかもしれない。
注意すること

「LGBTq+ではないよ」と答えがきたとき、もし「良かったー」「安心したよ!」などと言ってしまった場合、「あぁ、この人に言わなくて良かった」と壁を作ってしまう。
また、周りにいる当事者ではないけれどもLGBTq+は普通に世の中にいると認識している人からも距離をとられる可能性もある。
これは例えばあなたに結婚したいくらい好きな恋人がいるとして、親に「まさかあんな身分の低い人と結婚するなんて言わないよね?」と釘を刺されている感覚に近いかもしれない。
誰かの生き方を否定する人にあなたはならなくて良い。
まとめ

LGBTq+というのはその人のプロフィールの1つだ。
就活の履歴書みたいに気取る必要があるときもあるし、気の置けない友人に自分の弱点をさらけ出すときもある。
これは就活の履歴書を見る人が、初対面で信頼も何もないのに自分の将来を握ってくるからだし、気の置けない友人は信頼しきっているからである。
「LGBTq+かどうか」は外見からは分からない。
けど、相手が何が好きか、何に価値を置いているかはファッションや持ち物で分かるのではないだろうか。
ここから信頼関係を深めると、本当のプロフィールが分かってくるかもしれない。