
「実は自分はLGBTq+で…」
友人や知人、家族、仕事相手などにそうカミングアウトされることがあるかもしれない。
または、既にカミングアウトされたという人もいるだろう。
「実は自分は北海道出身で…」とプロフィールを言われた感覚の人もいるだろうが、人によっては「実は自分は不治の病で…」と打ち明けられたくらい動揺してしまうかもしれない。
僕もトランスジェンダー(生まれた体の性別と違う性別を自認する人)なのでカミングアウトは何人にもしているのだが、対応は人によってバラバラだ。
カミングアウトされた人はどう対応すればいいのだろうか?
対応の仕方に正解はあるのだろうか?
目次
正解対応
そもそも何故カミングアウトしたの?

実は「何故カミングアウトしたのか」は人によって、あるいは相手によって理由はさまざまなのだ。
あなたが友人なら「せっかく仲良くしてくれているのに、自分だけ秘密持っていたら悪いな」という罪悪感からかもしれない。
仕事で出会った人なら服装やトイレ、面会、保障などなど、実際的なことについての話に入る前の理由付けとしてのカミングアウトかもしれない。
だから、カミングアウトされて、その理由がつかめないときは
「自分にできることがあったら言って」
「相談あったら乗るよ」
「何で(出会ってすぐではなく)今カミングアウトしたの?」
と言ってみよう。
「全然そういうの気にしないよ!」はどうなの?

たまに、カミングアウトされた人が
「ゲイとか気にしない」「性別変わったとか全然気にしないよ!」
と返事する場合がある。
LGBTq+当事者ではない人が「こういう返しをしてしまったけど、LGBTq+の人は傷ついていないのかな?」と悩むケースもある。
LGBTq+の人はこれに対してどう思っているのかというと
人による
だ。ちなみに僕は「偏見持たないように気を付けてくれているけど、LGBTq+を意識しすぎて逆にお互い疲れちゃいそうだな…」と思う。
こればっかりは、普通の日常的なやり取りでのすれ違いと同じ事だ。
「こっちは悪気は一切なかった。でも帰ってから布団の中で思い返してみると、相手は自分の言動に傷ついているかも…」
そう悩むことは誰にでもある。
本当に傷ついている場合もあるが、「え?そんなの気にしないよー」と全く傷ついていない場合もあることは、あなたも経験上分かるだろう。
LGBTq+も同じだ。
「「全然気にしないよ!」ってサポートのつもりだったけど、傷つけたかも」と思ったら、相手にそう伝えてみよう。
本当に傷ついていた場合は謝るし、気にしていなければ引き続き良い関係を続ければ良い。
間違った対応
否定する

「実はゲイなんだ」「実はトランスジェンダーで自分は男性なんだ」
というカミングアウトに対して
「気持ち悪い」「そんなのはあり得ない!」
など、否定から入るのは止めてみよう。
確かに、「あなたにとって」はあり得ないことかもしれない。「あなたの周り」にとってもあり得ないことかもしれない。
だが、本人にとっては「あり得る」話なのだ。
中世ヨーロッパでは「黄金の国・ジパング」は夢・幻の国でファンタジーだった。「あるわけない」とされた。

でも、マルコポーロに「黄金の国・ジパング」と呼ばれた国・日本は、マルコポーロに見つけられるよりも遥か昔から飛鳥時代・平安時代などなどを経験しているし、中世ヨーロッパの時代には日本は足利将軍時代だった。
いくら中世ヨーロッパが「あり得ない」といっても、日本からしてみれば「あり得るし、現に今ここに存在してるし…」という感じだろう。
もちろん「LGBTq+である」ことは免罪符ではない。
だが「LGBTq+である」ことだけを理由に否定をしてはいけない。
この考えが悲劇を起こすことは第二次世界大戦が証明している。
他の人にバラす

カミングアウトされた人が、他の人に「あの人LGBTq+なんだって」とバラしてしまうことを「アウティング」という。
「アウティング」は嫌われる行為だ。
たとえ「皆にも知らせておいた方が周りにも本人にも良いはず!」と善意からバラしたとしても、本人から嫌がられるだろう。
LGBTq+はカミングアウトするとき、その人が信頼できる人かどうかで相手を選ぶ。
あなたも秘密を話すときは相手を慎重に選ぶだろう。
つまり、あなたにカミングアウトしたのは「あなたなら信頼できる」と思ったからなのだ。
「信頼できるから話したこと」を言いふらされたら信頼が崩れるというのは、どんな内容であっても同じことだろう。テストの点数でも、家族のことでも、好きな人のことでも、趣味のことでも。
相手が大切ならば、自分の判断で言いふらさず、相手のタイミングを待ってあげよう。
また、もしも悪意があって言いふらしたのであれば、相手はあなたを訴えることができる。
いずれにしても「言いふらす人」は誰からも信頼を失うので、あなたのためにもアウティングは止めよう。
まとめ

LGBTq+のカミングアウトだ、と考えるよりも、「相手を1人の個人としてみる」という話に近いかもしれない。
ケンカしたら謝る、自分に理解できないことだったら「どういうこと?」と質問をする、共感できなかったとしても「自分はこうだけど、あなたはこうなんだね」と認め合う。
友だちがAという有名人を好きで、自分の好みでなかったとき「どんなとこが好きなの?」と聞くだろう。たとえ分からなかったとしても「分かんないわ~、でも、大好きなのはめっちゃ分かった」と言うだろう。
これは人間関係の基礎だ。
これが意識できればLGBTq+だけでなく、誰とでも信頼関係を築けるのではないだろうか。